月別アーカイブ: 2015年12月

「世界のブックデザイン展」のご案内

今、印刷博物館の P&Pギャラリーで
「世界のブックデザイン展」をやっています。
(入場無料)

初日に見てきましたので、簡単にご案内します。

20151209

私がこの展示を見に行ったのは、
上の写真の一番手前の、武蔵野美術大学造形センターの
「博物図鑑デジタルアーカイブ」(特製本)を見たいと思ったから。

残念ながら非売品ですが、
J.クックの「太平洋航海記」と
D・デュルビルの「アストラブ号世界周航記」の中味は、
スマホ用のアプリで見る事が出来ます。
アプリの表紙↓
20151209_2

ポケットの中の博物図鑑ですね。
飽きずに眺めてしまいそうです。
いい時代になりました。

本のカバーは日本も様々なものが出ていて、
出版社もデザイナーも大変です。
ただでさえ本が売れない時代なので
目だつために、とても高度になっている、
と感じています。

一概には言えませんが、総じて
海外のブックデザインは日本の「目だつ」に比べると
「シック」な感じがします。

今回の特徴は、展示の説明にもあったように、
今まであまり登場しなかった東ヨーロッパなどのデザインが
選ばれていることでしょう。
その中で、私は、エストニアのセト語で書かれた本のデザインが
エスニックでシンプルで気に入りました。

こちらからご覧になれます。
Seto Library series named one of best designed books in the world
民族衣装の刺繍のような模様が素朴でとてもきれいです。

この他にもいろいろ展示されていて、
本好き、絵本好きにはたまらないと思います。

以下は、カナダの絵本のコンテストで上位に入ったもの。
  

オランダ語版の「不思議の国のアリス」
マニッシュでシンプルなイラストが大人っぽくて、良かったです。

実物を実際に手に取って見られるのが嬉しいです。
写真は撮影出来ませんし、
筆記具は鉛筆のみです。

アクセス
総合展示は
開館時間 10時~18時(入場は17時30分まで)
休館日 毎週月曜日(ただし祝日の場合は翌日)
入場料
一 般:300円(250円)
学 生:200円(150円)
中高生:100円(50円)
小学生以下無料
( )内は20名以上の団体料金

関連記事
印刷博物館、デートに良し、ファミリーでも良し、自由研究にも良し、楽しめる。

——————————-
<来年のカレンダーがまだの方へ>
おすすめ猫の日めくりカレンダー

猫の飼い主が撮った心温まる写真に、
飼い方や様々な情報がちりばめられたおすすめの日めくりです。
猫が可愛いだけではないのがとてもいいです。
英語もそれほど難しくないので、英語の勉強にもピッタリです。

のうりんポスターの記事を書く勇気をくれたのは夫の一言だった

昨日書いたのうりんポスターの記事は、
私のブログにしては相当のアクセス数になりました。

のうりんポスターだけではない、私が公共にある萌え絵を不快に思うわけ

そして、ハフィントンポストに、タイミングのいい記事が掲載されていました。
男性は知らない。すべての女性がやっていることを。

この記事には、男性の知らないところで、
女性が性差別に、いかに対処しているかが書かれているわけですが、
記事の最後の方に

そう、彼ら(男性たち)は私たちが日々直面している出来事を、知らないだけかもしれません。
あまりにも普通のことなので、伝える必要があるなんて私たちは考えもしないのかもしれません。

とあります。

そう確かに、私も若い頃は諦めていた。
ただ、昨日の記事を書いたのは、
本当に我慢がならなかったのと、
イヤな経験を隠さなくてもいい年のおばさんになったから
だと思う。
私が若い女性なら絶対書かなかった内容。

そして私が言いたかったのは、

「公の機関や行政や公共施設は、性的目線のキャラクターを使わないで」

ということです。
それは、女性への暴力だから。

ただ、この記事を書くまで、
私も、どの程度理解されるか分からなくて、
迷っていたのだけれど、
「書こう」という勇気をくれたのは夫の
「あれは暴力だからなあ」
のひとことでした。

そう、分っている男性は分っているのです。
必ずしもハフィントンポストの記事のように
知らないだけでもないのです。

ただ、マジョリティーではないのでしょう。

少し前に、女優のエマワトソンが国連で
「男女平等」を訴えるスピーチをしました。

【全文】「今こそフェミニズムを見直すべき」 女優エマ・ワトソンが国連で“男女平等”を訴えたスピーチ

スピーチにあるように
男性自身もステレオタイプの役割の犠牲者かもしれない。
のうりんポスターのような視線が
知らず知らずに男性に刷り込まれている可能性だってある。

だから、まず、
「公の機関や行政や公共施設は、性的目線のキャラクターを使わない」
ということから始めて欲しいのです。

この問題は、表現の自由と密接に関係している。
特に、規制派にとっては昨日の私の主張などは利用しやすいはず。
しかし、自由を重んじる私としてはそれは困る。

だから、行政の仕事を引き受ける制作会社などは、
自分達できちんと基準を作ってやってほしいです。

基準は「尊敬している相手に失礼に当たらないか」

です。
相手が女性でも男性でもです。

例えば、ミュシャのサラベルナールのポスター
妖艶で美しい上にサラへの尊敬のまなざしに溢れている。

のうりんポスターは批判されて、新しい絵柄にするようです。
私にすれば、このアニメキャラ、というのもどれも同じかんじですけどね。

というわけで、美濃加茂市の皆さんをはじめ、
日本中の制作会社や行政マンはこれを機会に
行政のビジュアルな表現はどうあるべきか、を考えてみて下さい。

参考のまとめ記事。
未成年の性的搾取(JKビジネス)と日本の異様な「カワイイ」

このまとめに出て来る
AKB48については以前記事にしてあります。
AKB48総選挙、……は?何、それ。

第一回セルフマガジン大賞にエントリーしました

ブロガーかさこさんの
第一回セルフマガジン大賞にエントリーしました

かさこさんが
第一回セルフマガジン大賞・エントリー30作品者紹介!

で紹介して下さったので、
こちらのをしばらくトップに置いておきます。
エントリー作品はこちら
ファイルのスクリーンショットです。

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20151208_3
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これであなたも現代美術のコレクター

一つ前の記事で、西洋美術館の基礎が松方コレクションにあったことは書きました。
今回は、現代の作家さんたちを支えるコレクターさんのお話しです。

実は、私の古い知人に現代美術のコレクターさんがいるのです。
仮にTさんとお呼びしましょう。

現代美術のコレクターさんでは、
会田誠さんの作品などを集めておられる
精神科医の高橋龍太郎さんという有名な方がいますが、
普通のお仕事をされながら美術作品のコレクターさん
である方は少なくないのです。

少し桁が大きくなると、
先日ノーベル賞を取られた大村智さんは
特許で築いた財を女性画家の作品の収集に使われて、
山梨に美術館を建てられています。

歴史的にみても、
地方の篤志家や財閥が集めたコレクションなどが
美術館となっている例が少なくありません。
古くは倉敷の大原美術館、
最近は箱根のポーラ美術館、
千葉のホキ美術館などが人気です。

反面、国立の美術館や博物館の自国の歴史的作品の収蔵規模が
ヨーロッパやアメリカなどとは比べ物にならないくらい貧弱なのは
気になるところです。

岡倉天心が日本ではなく、
ボストン美術館の東洋美術室長として活躍したことは
少しアイロニカルなエピソードです。

ただ、その辺りの国の文化政策の話は別の機会にして、
今回は現代美術のコレクターさん、ってどんな人?というお話です。

実際はメールのやりとりだったのですが、インタビュー形式で原稿を起こしてみます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

マダム:今回、「ペインティングの現在-四人の平面作品から-」に貸し出された作家さんをご紹介ください。

Tさん:高橋大輔君というアーティストです。2007年位から、追って観ています。貸出作品5点の内3点が出品されています。ポスターに使われている作品、一番小さい作品そして副題「てっさい」 の3点です。コレクターとして、美術館に貸出す事、嬉しく思っています。同じく出品作家さんの浅見さんは2001、2年位から(銀座・藍画廊から)観ています。

マダム:現代アートって、一部の人には人気があるけれど、やはり、わかりにくかったりして、なかなか見るきっかけがありませんよね?最初のきっかけはなんだったのですか?

Tさん:「現代アートを積極的に観歩く きっかけ」は、40代前半に仕事の過労から、入院して。その時、退院できたら、仕事以外に何か好きな事を始めよう!(ワーク・ライフ・バランスとして)と思い、昔から「アート」が好きだったので、「アート」を観歩こう。だったら「現代アート」を観歩こう。と考えたのが、きっかけです。以来、今年(2015年)で16~17年に成ります。

マダム:観歩くと言っても、お金も時間もかかりますよね?

Tさん:確かに美術館は入場料を取られるけど、画廊はタダ!(笑)。街歩きや散歩が好きな方は、地下鉄の1日券(&スニーカー)さえあれば、東京中の画廊を観歩けます。若い方なら、「アート散歩」。昔・若かった方なら、「アートお遍路(笑!!)」と称し、プチ旅・感覚で観歩くと、知らず知らずに現代アートを楽しめると思います。

マダム:「画廊はただ!」なるほど!それは穴場の視点ですね。(笑)
では、実際,観歩く時、何に心がけたら楽しめますか?

Tさん:現代アートに、親しみ興味をもち楽しむ方法ですか。なかなか難しいですね(笑)。というのも、音楽や映画などの受け身・型の楽しみ方と違い。現代アートの場合は、今まで生きて来た中の「経験&知識&遊び心(好奇心)」をフルに使い、アート作品に体当たり(能動的に)をしないと楽しめないからだと思っています。特に、遊び心(好奇心と柔らか頭)が必要に思います。具体的には、アートを 「いっぱい、観る事。」だと思います。

マダム:いっぱい観る、ですか。数をこなすというのはどの世界でも重要ですよね。数をこなしつつ、さらに面白く観る方法が何かあれば。

Tさん:画廊や美術館で「現代アートを観る時」 まず、好き嫌いの感情をもたず、「どういう人が?、どうやって?、何の為?」に作品を作ったのか?を想像すると面白くなると思います。。例えば、デュシャンと云う作家さんが、無審査の公募展に、工業製品(男性用の便器)を台座に載せて出品しました。絵を描く時や写真を撮る時、モチーフや被写体を「選びます」。この「選ぶ」と云う行為と デュシャンさんが工業製品(便器)を「作品」に選ぶことは、大した違いが無いと思いました。たぶん、この時、デュシャンさんは、アートの根本は、「選ぶこと。」と思った(考えた)。のかも知れません(笑!!)。

マダム:デュシャンの話は現代美術の入り口なので、初心者の方は後で紹介する本を読むと良いかもしれませんね。ところで、現代美術というと世界的にはどのような流れになっているのでしょうか?

Tさん:「世界の現代アートと日本の現代アート」は、かなり違いがあります。 世界の現代アートは、アート作品に、 歴史的&文化的な文脈(流れ)とその作家が育った国(環境)そして作家・個人のアイデンティティが作品に込められいるか?が重要なポイント(評価の)となります。一方、日本の現代アートの場合は、文脈やアイデンティティについての評価が、曖昧です。その為、面白い表現や面白いコンセプトの作品が、注目を受けます。あまり日本の「評価」を気にせずに、自由に「自分の評価」で作品を楽しんで良いと思います。

マダム:さて、作品が楽しめるようになると、やはり自分でも購入したいと思うようになるでしょうが、どのような基準で購入されますか?

Tさん:基準は「自分の勘」です。(笑)それから、保存出来る大きさであるか、も大きなポイントです。

マダム:そういえば、今回の展覧会で、高橋さんの作品が一番個人蔵が多かったのですが、大きさが手頃であったことが関係しているかもしれませんね。ところで、差し出がましい質問ですけど、購入費はどうされていますか?

Tさん:私はお酒は晩酌程度ですし、タバコもやらないので、なんとか捻出出来ます。(笑)

マダム:なるほど。ところで、先ほどから「アート」という言葉を疑問をもたずに私たちは使っていますが、「アート」を定義するとしたらどうなりますか?

Tさん:アートとは?少し難しい質問ですね。精神科医で現代美術コレクターの高橋龍太郎さんは、「アートとは常識に縛られないことをうながすメッセージです。」と言っています。僕もそう思います。僕にとってアートは「宗教+哲学+経済学」だと思っています。

マダム:「アート」は美術や芸術という言葉とどう違うのでしょうか?

Tさん:美術と芸術とアートの 違い?これも少し難しいですね。「芸術」はほぼイコール「アート」かなぁ。「美術」は芸術の、一部分かなぁ。ぐらいです。「芸術」は重い言い方で、「アート」は軽く、親しみやすい感じで「アート」と言う言葉を使うように感じています。

マダム:現代美術を見て楽しみ、買って楽しむ。コレクターのTさんにお話を伺いました。ありがとうございました。

<参考文献>
  

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上野から日暮里までスマホ散歩。430円でルネッサンスから現代美術まで(5日までの期間限定)

今日は430円で、ルネッサンスから現代美術まで楽しめる
美術散歩のご案内です。
ただし、12月5日(土)および12月6日(日)までの期間が短い展示が有りますので
ご注意ください。
私自身、期間が短いので、飛んで見に行ったのです。

場所は上野から日暮里駅まで。
下の地図で①から⑦まで行きます。
20151202-1

①上野駅

②国立西洋美術館 常設展(430円)
フェルメールに帰属するといわれる《聖プラクセディス》の展示

③東京都美術館 (どちらも無料で12月6日(日)まで)
ギャラリーA「忘れたと思った?」
ギャラリーB「東北画は可能か?」

④芸大美術館 (無料で12月6日(日)まで)
東京藝術大学大学美術館で藤田嗣治 《舞踏会の前》 修復完成披露展と遺品を公開展示

⑤スカイ・ザ・バスハウス(12月5日(土)まで) 
李禹煥リーウーファン展「色のハレーション / 空間のハレーション」

谷中霊園参道散歩

⑦天王寺 日暮里駅

順当に歩いて4時間くらいでしょうか。
以下、スマホ散歩です。
昔は西洋美術館は写真が撮れなかったけど、
今はフラッシュを焚かなければOK。
ただし、所蔵作品に限りますので、
表示に気をつけて下さい。

国立西洋美術館
現在の企画展は「黄金伝説」
IMG_2031

私のお目当ては、↓こちら。フェルメールに帰属するといわれる《聖プラクセディス》の展示
IMG_2034

常設の一番奥に有りましたが、
写真は撮れませんでした。
この絵は、フェルメールに帰属する、
という注釈がついているのは、真贋について
研究者の意見が一致していないからなのね。

2014年に個人収集家がこれを入手して、
西洋美術館に寄託。
皆さんはどう思いますか、という意味を含んでいるらしいです。
説明のリーフレットを読むと、
白色顔料の鉛白の同位体分子からオランダのフェルメールの時代のもの
と極めて近い、ということは分っているけれど、
フェルメールだと言う決め手は無い。
私は、フェルメールにしては上に乗っている左手のデッサンが変ではないかな、
と思ったのね。
さて、真実はどこに?

久しぶりに見た、西洋美術館の常設。
幾つかご紹介します。

この人が、西洋美術館の基本となった松方コレクションの松方幸次郎氏。
IMG_2062
松方コレクションの数奇な運命は是非西洋美術館このページを読んで下さい。

美術館の外にはロダンやブールデルがあります。
これらもゆっくり見たいです。

↓ロダンの「地獄の門」
IMG_2035

↓ブールデル「弓を引くヘラクレス」
IMG_2037

ルノアール「アルジェ風のパリの女たち」
IMG_2042

おなじみモネの「睡蓮」
IMG_2047
この絵はモネの部屋にあって、
モネは本当に楽しそうに絵を描いていたんだな、
と思わせる作品ばかり。
アイリスやシャクヤクの咲き乱れた、「モネの庭」。
モネは自分でずいぶん庭仕事をして過ごしたそうで、
それをモデルにした公園が高知に有ります。
北川村モネの庭

さらに進むと美術館の中庭が見えます。
IMG_2053

そして奥の印象派以前の部屋で見つけたかわいい一品。
ルーベンス「眠る二人の子ども」
FullSizeRender

習作のような筆致ですが、それがまた子どもの寝息まできこえそうで、
可愛い。
でも、よく見ると右側の子どもは、薄目を開けて見ているのね。
ささっと描いているルーベンスを見ていたのかな?

そしてもうひとつのお気に入りは、女性画家の22歳の時の自画像。
このくらい美人だと、自分を描いても楽しいでしょうね。
マリー・ガブリエル・カペ「自画像」
IMG_2057

これ以外にも静物画風景画、セガンティー二やドニまであって
私はたっぷり2時間見てしまいました。
これで430円は安いです。
常設はおすすめです。

さて、色づいている公園を横切って、
IMG_2073

東京都美術館へ。
「忘れたと思った?」と「東北画は可能か?」のグループ展示です。
IMG_2090

「東北画は可能か?」は見に行くつもりでいたら、
たまたまお隣で、美学校出身者によるユニットの作品展があることも知り、
両者のあまりの違いに、表現の奥深さに心打たれたかも。

「東北画は可能か?」
IMG_2080
やはり2011年3月11日の東日本大震災抜きには語れないです。
思いのたけが詰まった迫力の一点。
IMG_2083

「忘れたと思った?」
FullSizeRender
ギャラリーは地下3階。地下1階から眺められます。
銀河のよう。
IMG_2091

比較するものではないし、偶然とはいえ、
全くアプローチの違う二つの世代の近いグループが
隣り合って展示している、
ということがすごく意味があるような気がするので、
おすすめです。

「東北画は可能か?」は図録が素晴らしい。
「忘れたと思った?」はイベントがあるようなので、上のサイトでご確認を!
どちらも6日まで。

さて、次は、芸大美術館の藤田嗣治。
IMG_2092

《舞踏会の前》の作品修復過程の解説と修復後の作品の展示。
さらに、美校時代に描いた自画像やお父さんの肖像画。
技法の解析も興味深かった。
実は資料の方は、藤田に関する本を何冊か読んでいたので
既視感があったけど、
修復の方は、色々な技術的なことが分かって
いま自分の試していることにも役立ちそうで、
ほんとに行って良かった。
こちらは6日まで。


芸大を出て、谷中に向かう風景は、
まさに「谷根千」。
左右に面白いお店があるけど、
結構車の通りが激しいので気をつけて。
これはお菓子屋さん。
IMG_2097
ただ、昔ほど昭和の雰囲気はないですね。
ちょっとそこが寂しい。

最後は現代美術の大御所。
IMG_2107
バスハウスって、昔のお風呂屋さん跡ね。
もちろん、バウハウスももじっているのだろうと思われ。
ハレーションを起こした作品が外からも見えます。
こちらは5日の土曜日まで。

このあとは谷中の霊園の中を通って行きます。
IMG_2112

こんな昭和の建物も残っています。
お茶屋さんや石屋さん。
FullSizeRender

実は、私の両親のお墓がここにあるので、
私は時々来ています。
しばらく来なかったので、今日はお掃除しました。

ここの霊園は有名人のお墓がかなりあります。
珍しいところでは、お茶の水のニコライ堂をたてたニコライさんとか。
上の⑥番のリンク先に詳しいです。

通りの突き当たりは、古刹の「天王寺」。
IMG_2120
造り直して、マンションの入り口みたいになっていてビックリ。
谷中霊園の通りは、この天王寺の参道でもあって、
桜並木なので、春はきれいですよ。

天王寺の塀に添って進むと、日暮里の駅が見えてきます。
IMG_2121
タワーマンションもいつの間にか出来て、
あまりの変わりようにちょっとクラクラしました。

というわけで、無事日暮里駅に到着。
お疲れさまでした!

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キュレーションという言葉を体感した日

いま、知人のムカイヤマ達也さんが個展をされています。
ムカイヤマ達也 個展「画布を分つと二つになる」展
前回の個展から半年もたたず、
新作17点を引っさげての個展です。
すごいエネルギー。

12月8日(火)までなので、
行かれる方はお早めに。
IMG_2019

実は、土曜日28日のトークに参加したので、
そのことをかきます。

翌日、下の為末さんのブログを読んで、
いろんな記憶が結びついたのでそれも含めて書きます。
TAMESUE 2015年11月29日 狙う姿勢

この記事は長くなる予感。(笑)

ムカイヤマさんのフェイスブックを見たら、
トークで話す内容と登壇者が出ていて、
気になる言葉があったので、これは行って来なければ、と行ってきました。

日 時:11月28日(土)18時〜
登壇者:野田尚稔(世田谷美術館 主任学芸員)
    ムカイヤマ達也
    青木彬
▼こんなことを話す予定です▼
・分断への抵抗
・絵画の条件
・母性 / 父性的作品
・個人 / 孤人
・共身体
・絵画の構造と主題の関係性
・虚構について
・フレーム

どの言葉が気になったのかというと
・絵画の条件
という言葉。

自分の話になるけど、311にほぼ10年の休眠から目覚めて
制作を再開した時、当然私は浦島状態でした。

もちろん、絵の世界ははるかに進化していて、
しかも、アートの世界は
「何でもあり状態」に突入していた。
私はほとんど精神的には混乱状態。

ただ、こういう時に慌てても仕方ないので、
とにかく「千里の道も一歩から」を
モットーにスケッチから出直して行きました。

過ぎてみれば、結果的にそれは正しくて、
いま私は活動休止したときよりは
ずっと前に進んでいる。

ただ、この間、ずっと考えて来たのは
その何でもあり状態でも、絵の本質とはなんなのか、
「絵とは何か」「絵の条件とは?」
ということでした。

で、ムカイヤマさんが「絵の条件」という内容で話す、
ならば聞きに行かねば、と思ったわけです。

2時間あまりのトークの最後にムカイヤマさんは
おもむろに「絵の条件とはなんでしょうか。」と切り出されたのですが、
それは、ムカイヤマさんが今、鈴木忠司さんの本を読んでいて
本の中に「演劇の条件」という言葉がよく出て来るので、
では、「絵の条件」「これこそが絵の本質だ」ということはなんだろう、
と思ったのがきっかけだったそうです。

で、鈴木忠司さんは
「演劇の条件、これがなければ成り立たない、というのは俳優だ」
と書いているそうです。

このあと、会場の皆さんがそれぞれ「絵の条件」について語ります。
「見ること」と言う方。
「これが絵そのものだ、と思うこと」という意見も。

哲学的形而上的な意見が多かった中で、
なんと私は「描くものと、描かれるものがあること」
という大変即物的な答えを出しました。
私の答えに異を唱える方もいらした。
そのくらい即物的だった。

ただ、私はこのとき、ただ一人、そこにいる誰もが見ていない情景を
思い描いていたのです。

鈴木忠司さんは「演劇の条件は俳優だ」
と書いている、と聞いた時、
私は、遥か十数年前に見た、鈴木忠司氏の演出による白石加代子の
一人芝居を思い出していました。

それは、白石加代子が、古い民家の床を舞台に鯵の干物を食べる、
というものでした。

でもそこにいるのは、白石加代子だけ。
鯵の干物もごはんもない。

でも、確かに白石加代子は、私の目の前で、
鯵の干物を食べているのです。
骨の一本一本までお皿の縁に並べて行く。

「見えるよう」という表現があるけど、
そうではなくて、実際にそこで食べているのね。

そのくらい迫真の演技でした。

確かに、俳優しかいなくても演劇は成り立つのだ、
と、私は、その場面を思い出して、
「そうか、そういう事か」と思っていたわけです。
つまり、鈴木忠司のいう「演劇の条件」とは構成要件のことなのだ、と。

そしてその当たり前だと思っている構成要件は、
当たり前すぎて問われることもないが、
しかしそれがなければ成り立たないものなんだ、
「ああ、絵もそうだ。描くものと描かれるものがあれば成り立つんだ」
と思い至って、
すごくストン、とそしてあまりにアッサリと311以降考えて来たことの
ひとつの答えに、唐突に出会ってしまった。

当たり前過ぎるほどの条件。
ピアニストにとってのピアノ。
木彫家にとっての木とノミ。
文筆家にとっての言葉。

「何でもあり状態」の絵の世界も同じなんだ、と。

さて、先の為末大さんの狙う姿勢というブログには、
何処かに行くとき狙う姿勢がある人は、
漫然とそこにいる人より上手く行く、
ということが書いてあるのだけれど、
まさに、土曜日の私がそうだったな、
とブログを読んで思ったわけ。

「絵の条件」という言葉をずっと考えて来たから
その言葉にひかれてトークを聞きに行き、
そこで、私は思わぬ拾い物をしてしまった。

ところで、28日のトークには
お2人のキュレーターの方が参加して
有意義なお話を聞かせて頂きました。

美術館の学芸員が本義だったキュレーターという言葉。
すっかりIT用語になっています。

ことバンク キュレーション

アマゾンでキュレーションを検索してみました。
IT関連の本がたくさんでています。
キュレーション

便利で、新しい言葉なので、
キュレーションは情報の精査と再構築、
という意味に使われているようです。

こんなページもあったし、
以下のように書かれているから間違ってないと思うけど、
ITでありながら、結局最後は人間の勘やら経験やらを使って、
という意味であることは確かみたいですね。

Manual database curation involves the following steps: (1) finding articles of interest; (2) finding and extracting facts (relations, events, associations, etc.) relevant to the database focus; and (3) converting extracted information into predefined …

情報の海を結局最後は人間が捌く。
そのバックグラウンドには、経験などの身体性が求められるのは
言うまでもなくて、
ただネットの海に転がっている情報を集めてきて(A+B)÷C=D
にすれば良いのではないはず。

まさに、キュレイトの本来の意味である「司祭」みたいな作業です。
つまり、本来あったけれど見えていなかったものを選び出して伝える役目。
これこそ、森有正のいう「体験が経験化する」ことで、
私の経験はキュレーションそのものではないのか。
バッハ弾きでもあった森有正のパイプオルガンが聞こえてきそうな日でした。

ムカイヤマさんの個展の話しが自分の経験の話しになってしまいました。

ムカイヤマ達也 個展「画布を分つと二つになる」展
12月8日(火)までです。
皆様是非。

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