日別アーカイブ: 2015年12月10日

藤田嗣治の戦争画、やはり、今見ておきたい。

9月からやっている
「東京国立近代美術館 MOMATコレクション藤田嗣治、全所蔵作品展示」
ようやく見てきました。
20151210

13日までで、残り日数少ないですが、
行ってなくて、行きたい方はもちろん
「南京大虐殺なんてなかった」と言う人も是非行って見て下さい。

もともと近代美術館の常設は見応えがあり、
さらに2012年にリニューアルしてからパワーアップ。

今年は、「東京国立近代美術館 MOMATコレクション『誰がためにたたかう?』
に引き続き、藤田嗣治の戦争画を含む全所蔵作品の展示。

明らかに、時流を読んでの、近代美術館の企画に拍手を送りたい。

以前から近代美術館では、戦争画は藤田に限らず、宮本三郎など、
常に常設で展示していました。
しかし、どうしても、企画展のついでに見る、
という感が否めなかった。

そして見る側も、見てはいけないものを見るような
感覚が拭えなかった。

だから、はっきりと戦争画に焦点を当ててもらった事は
見る側としても『タブーにしなくていいんだ』感が生まれます。

戦争画14点、一挙に展示はさすがに圧巻です。
実は、これらは実質的には「所蔵」になっているけど
戦後アメリカに没収されたものを「永久貸与」という形で
日本に戻されたものです。

近代美術館のホームページには

 1920年代、パリで成功を収めた理由は何だったのか。なぜ日本に戻り、戦争画を制作したのか。戦後フランスに渡り、何を考えていたのか。藤田をめぐるさまざまな問いは、いまもわたしたちに未解決のまま残されています。

と書かれてあります。
私は、偶然にも311の前後に藤田についての本をまとめて読んでいて
その未解決の問いを考えてきました。

長い間、気になる存在でありながら、
日本との関係の複雑さから表立って研究されなかった藤田が、
この10年くらいで注目を集めています。

2006年には、元NHKのディレクター近藤史人氏が番組作りを通じて得た知見をもとに
藤田のまとまった伝記を出版。

2008年には、林洋子氏の「藤田嗣治 作品をひらく -旅・手仕事・日本」
<第30回サントリー学芸賞/第26回渋沢・クローデル賞ルイ・ヴィトンジャパン特別賞受賞作>
が出版され、一気に藤田ブームが到来しました。

小栗康平監督の映画も公開中です。
『FOUJITA』

戦争責任問題で日本を離れた藤田が注目を集めるのと歩みを同じくして
政権が9条を壊す法案を通すなど
時代の動きは一筋縄では行かない、と感じさせます。

今回の展示では、気鋭のキュレーター鈴木勝雄、蔵屋美香、
の両氏が作品解説をしています。
作品解説にしてはかなりキュレーターの見方を織り込んだものになっていて、
賛否両論あると思いますが、
藤田の存在の複雑さを考慮すると仕方ないのかな、
と思わせられました。

ただ、出来たら多くの人に、絵を見るだけではなく、
藤田の自伝や研究書も読んでほしいのです。

そして、一人一人が

藤田をめぐるさまざまな問いは、いまもわたしたちに未解決のまま残されています。

という未解決の問題を考える事が
あの戦争を「新たに」考えるきっかけになると思うのです。

  

ところで、
先日の上野の西洋美術館もそうだけど、
常設企画で所蔵作品を積極的に見せてもらうと、
安い入場料で充実感の味わえる展示になります。
(近代美術館も常設だけだと430円)

これはとても重要な事で、
ひとえに所蔵作品が増えて来ているからで、
美術館の努力に感謝したいと思います。

西洋美術館の所蔵はアジア屈指ということですし、
やはり戦後の日本の発展は、文化の点でも
日本を含めたアジアに貢献していたのだと
確信出来ます。

この視点からも、現政権の戦争へ加担していく姿勢は
非難されるべきです。
平和国家として築いて来た地位と
人類の文化に貢献して来た人々の努力を
ただひとつの政権で、壊してはなりません。

戦争法案を廃止にするために
来年の参議院選挙が重要です。

文化を守るためにも重要なポイントになるでしょう。
肝に命じたいです。