日別アーカイブ: 2013年8月28日

オペラアイーダ、キャンセル騒動

9月に東京ドームで開催が予定されていた、
「オペラアイーダ」のキャンセルが話題になっています。

私も今朝の新聞を見てビックリ。

10万人動員予定が4000枚しか売れなかった、
ということのようですが、
ネットニュースでは韓国企業が絡んでいた、
という記事もあり、謎が謎を呼ぶ雰囲気。

実は私、このヴェローナ野外円形劇場で実際にオペラを見た事があるのです。
なので、その時の思い出も交えながら、
この話題について書いてみます。

まず、検索してみてビックリしたのが、値段の高さ。
すでに公式のHPは払い戻しの画面しか残っていないのですが、
こちらの案内によると(これもリンクがすぐ切れそうですね)
VVIP席 一般価格:70,000円
VIP席 一般価格:50,000円
R席 一般価格:30,000円
S席 一般価格:18,000円
A席 一般価格:8,000円

実は東京にはオペラやダンスなどのパフォーマンス系の劇場「新国立劇場」があります。
そこを使わずに、東京ドームにしたのは、多分、ヴェローナ野外劇場をそのまま持ってくる、
という規模のためでしょうが、
そもそもそれが無理筋だったなあ、と思います。

というのも、かのヴェローナ野外劇場は、確かに野外劇場なのですが、
音響がとても素晴らしい劇場なのです。

私がヴェローナに行ったとき、最初からオペラを見るつもりはなかったので、
当日の午後に空いている一番安くて一番空に近い席しか残っていませんでした。
つまり、野球場の外野のセンタ奥一番上の席。
値段は三千円くらいだったと思います。

ちなみにこのヴェローナはシェークスピアの「ロミオとジュリエット」の舞台の街で、
またロマネスク美術の宝庫です。

で、全く舞台から遠い席で、期待もせずに見たのです。
演目は「カルメン」でした。
円形劇場の大きさは、ローマのコロッセウムに比べたらずっと小さく、
イタリア国内3番目の大きさをだそうで、収容人数は2万5000人とか。

イタリア、アレッツオの街灯

イタリア、アレッツオの街灯

席に座ると、自分の手のひらくらいに舞台が見えました。
武道館の一番上より舞台が小さいのですから、
あまり期待はしませんでした。
あくまでも話の種、という感じ。

しかし、始まってビックリしたのが、音の良さ。
歌手の囁くような歌も(何を言っているかは分からないけど)
ハッキリと聞こえました。
もちろん生のオーケストラの音の素晴らしさ。
どうやら、すり鉢状になっているので、
音が這い上がってくるようでした。

席はほぼ満席ですし、夏とはいえ、アリーナ席は盛装の男女で埋まっていて
音の吸い込みもあるのでしょうが、
魔法のように良く聞こえました。
そして、さらにド肝を抜かれたのは、舞台に4頭立ての馬車が出て来たことです。
スペクタクルとしても申し分なく楽しませてくれました。

一方、一緒に行った友人は、オペラに興味が無く、最初は行かないと言っていたのですが、
結局最後はチケットを買って、席はオーケストラボックスの真下。
指揮者の背中しか見えなかったそうですが、
楽団員の譜面まで読めたので感激だったと言っていました。

もしこの規模の舞台を東京ドームで再現するとしたら、
まず、絶対的に音響が不備だったと思います。

日本でオペラを見たい、と思う人は、少なくないでしょうが、
でも、シルク・ドュ・ソレイユを見る層が行くには、
上記の値段は高すぎます。
また、夏休みやバイトロイト音楽祭やニューイヤーコンサートは
ツアーが組まれて、本場が見たい人は、7万円を東京ドームで払うなら
一年我慢して、現地に行くでしょう。

それに、絶対的に準備期間が少なかった感じです。
今年は、ヴェルディ生誕二百周年で、
ヴェローナ劇場が再び劇場として使われるようになってからも百周年、
ということで、「アイーダ」の1913年当時の美術舞台が再現される
企画もあるようです。

たとえ、東京ドームで舞台を再現出来ても、やはり音響のコストパフォーマンスは
問題を残したでしょうね。

舞台興行として内部にどんな問題があったのか
知る由もありません。

観客としては、今はネットでチケットが買える時代ですから、
来年の夏休みに現地に行ってみるのもいいかもしれませんね。

ベネツィア・サンマルコ広場

ベネツィア・サンマルコ広場

↓アレーナ・ディ・ヴェローナ管弦楽団・合唱団の「アイーダ」が出ているようです。

お薦め本〜辻邦生「背教者ユリアヌス」


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この記事は5月の連休用に4月26日にアップした記事なのですが、
最近、スパムのターゲットにされているので、
一端削除し、再掲します。

連休に限らず、是非読んで頂きたいお薦め本の一冊です。

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今日、羽田モノレールに乗ったら
大きなキャリーバックを引っ張っている人たちに
会いました。

……で、
「あ、連休なんだ」と思い出しました。

といっても、
私は混んでいるところに行くのが苦手なので、
連休中は家に居ます。

仕事のメールも来ないこういう時に
じっくり普段は出来ない事をする
のはどうでしょう。

休暇だからと旅行や買い物で終わってしまうと
又あたふたと仕事に戻ることになります。

一日くらい、ネットを完全オフにして、
缶ではなく、
コーヒーをゆっくり煎れ、
空でも眺めてみましょう。

時計替わりにテレビをつけるのも我慢ガマン。
最初は淋しいかもしれませんが、
半日もすると、外の鳥の声や
風の音が聞こえて来るようになるでしょう。

季節は気がつかない間に移り、
もう新緑が青々とした影を落とし、
花の色も濃くなっています。

もし、連休中に読む本をお探しなら、
まだ「文学」という言葉が人々を深く動かしていた
昭和の代表的な物語作家、
辻邦生の本はいかがでしょうか。
理知的な耽溺を味わうことができるかもしれません。

辻邦生は学習院大学で教鞭をとりながら、
膨大な量の作品を残しました。
その作品の多くは
日本やヨーロッパを舞台にした、
叙情溢れる大ロマン小説です。

特にお薦めなのが、文庫で3巻あり、
まとまった休みに読むにふさわしい長さの
「背教者ユリアヌス」。

題名は生硬ですが、正真正銘のロマン大河小説で、
深い深い愛の物語です。

一度読みはじめたら、寝るのも惜しくなるほど
その物語の世界にぐいぐいと引き込まれて行きます。
「物語を書き続けなければ」と言っていた
作家の面目躍如で、まさに金字塔の作品です。
そしてその筆致は的確でありながら豊穣です。

例えば、
愛する人を思ってユリアヌスが花の庭を散策するシーンなど、
まるで、読者がその隣でユリアヌスの息づかいを
聞いているかのような錯覚を起こさせるほどで、
読んでいると胸がドキドキしてきたものです。

辻邦生は、フランス留学の経験があり、
パリのアパルトマンを借りて日本と行き来していた時期もあるようです。
パリで客死した思索家の森有正とも親交があって、
ヨーロッパの歴史に造詣の深い知識人であると同時に
品のあるインテリ風のハンサムな人でしたが、
その日記などを読むと、「書く事」へのほとばしる情熱で
まるでアスリートが筋力トレーニングをやるように
毎日毎日原稿用紙に向かっていたようです。

奥さんで美術史家の辻佐保子氏は
「いつも書いている人だった」
と語っています。

20130426

平成に入って今年で25年。
四半世紀が過ぎようとしています。
辻邦生自身は平成11年に他界しますが、
昭和44年から47年まで、
昭和のど真ん中に発表された小説で、
昭和48年に毎日芸術賞を受賞した作品です。

そのスケールの大きな壮大な物語は
是非、平成生まれの人に読んでもらいたい一冊です。

物語が真の力を失いかけているような今、
ほんとうに「泣ける小説」とはどういうものなのかが
味わって頂けると思います。

深い感動と溢れる物語をあなたへ。

では、素敵な連休を。
私は連休中もボチボチ更新して行きます。


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