パクリ問題以上に問われるべきなのが、
パクリ程度で勤まってしまうようなアートディレクターが生まれる
土壌です。
既に指摘されているように、
かなり狭い人脈の中で、デザイン賞のやり取りをしたり、
大学の教授の椅子が選ばれたりしているようです。
今回たまたま明らかになっただけで、
多分日本社会は、多かれ少なかれ
この、川が澱んで流れなくなった状態が、
いろんな分野で存在していると思われます。
政治だって世襲だらけですし、
佐野研二郎氏個人の問題というより、
日本社会の問題でしょう。
特に本来なら、国民の幸福を第一に考えるべき政治家が
世襲の自分達の祖先の恨みを晴らすような
政治をしているなんて、
先進国とは思えない状態です。
また、これは私の交友範囲での判断ですが、官僚や学者の家庭から
官僚や学者が生まれる確率も高くなっているような感じがします。
家庭環境というのは、人が進路を選ぶ時に多大な影響を及ぼしますから、
親と同じ職業を選ぶ、というのはあり得ることです。
それでも、それを可能にするのは、
親の経済力が関係して来るのは言うまでもないことです
また、面白い人生より、つつがない人生を送ることを良しとする社会では
自分の隠れた能力にチャレンジするより、
目の前の「親」というモデルをトレースする人生の方が
失敗を最小限に抑える選択肢であることも、ある面確かでしょう。
また、必要以上に「血」に重きを置く人も少なからずいて、
「家業」という考え方もあるのかもしれません。
長い繁栄と安定が、人々に冒険を好まなくさせていることもあると思います。
人間社会は安定して来ると、どうしても階層の固定化が起こりやすいのでしょう。
しかし、そうすると、下から這い上がれない人たちの鬱憤やエネルギーがたまり
下克上の世の中になったり、革命が起きるなど
社会が不安定になります。
こういったことが人類史上幾度となく繰り返されて来たわけです。
戦後はある意味、立身出世の時代でもありました。
貧しさから抜け出したくて必死に勉強して
出世した人もたくさんいます。
しかし、階層が固定化するたびに戦争起こされたらたまりませんから、
平和の時にも、社会システムとして、人材が流動化するように
国家は、情報公開したり、富の再配分に配慮して
貧困が教育を受ける妨げになったりしないように、
事前に風通し良くする工夫をするわけです。
この観点から見ると、民主党政権の「子ども手当」というのは
この平和時において社会の流動化に貢献する制度だったことが分ります。
何でもかんでも世襲にするな、というつもりもないものの、
本来なら誰にでも開かれているはずの行政のポストまで
世襲になるとは非流動性もここに極まれり、
という感じです。
しかし、機会の平等を担保しないのは、新しい才能を取り入れる上でマズい、
と思ったある大学が、大学院博士課程を実質的に無料にする、
とアナウンスしました。
社会の安定が生む階層の固定化ですが、
生き物としては、戦略的にかなりマズい状況といえるでしょう。
生き物というのは様々なリスクに備えて
多様性を用意することが、どんな状況でも生き抜くための戦略になります。
様々な家庭環境で育った様々な個性を持った人たちが
活躍できていくことは、社会そのものを強くします。
どうやったら新しい才能や空気が取込めるのか。
ほとんどテレビは見ない私、たまに見ると
○○審議会やら懇談会に出席している人たちのほとんどが
保身で身を固めたおじさんたちばかり、という状況を目の当たりにして
ちょっと深いため息をつくのでした。
これでは、新しい人材も育たないし、
国際競争力も、落ちる一方です。
今後は、理科大のような試みが増えることを望みますし、
本当はしっかり国のシステムとして機会均等にしてほしいので、
私たち自身が、世襲の政治家を選ばないこと、
も重要かもしれません。
世襲の政治家が何故選ばれるか、というと、
上で述べたおじさんたちが既得権益を守るために
群がるからです。
ほんとに選挙は大事です。
投票率が65~70%を超えるだけで、世襲は落とせる、
と言います。
だから、おじさんたちは落とされないために、
政治を考えることが特殊であるかのような印象操作をして、隠そうとします。
高校生がデモするだけで、大騒ぎになっていますが、
これが世界標準です。
まだまだ時間はかかるでしょうが、
柄谷行人の言うところの「デモのできる社会」が確実に育っています。
それはとりもなおさず、流動性の高い社会への大きなアプローチです。
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