日別アーカイブ: 2015年3月19日

地味だけれど革新の仕事、浅見貴子さんの展覧会はお薦めです

このブログを始めていらい、
現代作家の展覧会を紹介したことがほとんどありませんでした。
一昨年森美術館で開催された「会田誠展」ぐらいでしょう。

今日は、アートフロントギャラリーで開かれている
「浅見 貴子 個展  光合成」を拝見して来たのでご紹介します。
(お名前は「あさみ」さんではなく「あざみ」さんと読みます)

お薦めなので、
東京近辺の方は渋谷方面に出た時に、ぜひ代官山まで足を伸ばして下さい。

本当は、なんの既成概念も持たずに見てほしいので、
以下に書く事は、まっさらな心で見たい人は読まないでね。

…………

何がお薦めなのか。
まず第一に、表題にあるように、地味にコツコツと積み重ねていらした作家さんだし、
作品も墨や胡粉を使った全く気をてらうところがないのだけれど、
その仕事は革新的です。

恥ずかしながら、私は、昨年の反戦展でご一緒するまで存じ上げていなかったのです。
ただ、反戦展で搬入の時に、初めて作品を拝見した時に
知らないけどすごい作家さんがいる、と深く心に刻まれました。

そしてその後、直接お話をうかがう機会があって
是非展覧会の時には拝見したいものだ
と思っていました。

何が革新なのか。

技術的には、紙の裏から描く、という事をされています。
和紙と墨だから出来ることですが、
この発想はなかなか出ないものです。

失敗に失敗を重ねて、ある時これいいじゃない、
と始められた技法のようです。
セレンディピティですね。

そして私が一番唸ったのは(ちょっと悔しくもあるくらい)
その裏から描く、という技法だから出来たことなのですが、
実に軽々と抽象と具象の壁を乗り越えて、表現されている事です。

基本的には浅見さんの作品は具象です。
しかし、現在の技術にたどり着く前の作品も拝見したのですが、
対象を純化する事に長けていらして、
対象のエッセンスを表現される事でそこに抽象性が生まれるのです。

これは私自身が、とても勉強になりました。
そして私に足りないところ。痛感しました。

今回の展覧会はコンテンポラリーアートのギャラリーでの開催です。
といっても浅見さんの仕事は、いわゆるコンセプトアートとは逆のベクトルで、
手と目の仕事です。

ギャラリーの解説に「光と風を織り込んだ」とあるように、
まさに、フィジカルにからだごと風を感じ、光を捉えて
手が画面を再構築して行っているのです。

基本にあるのは、デッサンです。

浅見さんも
 「デッサンから作品になる過程は言葉で表せないけど、
でもデッサンがないと出来ない」

と仰っていました。

実は、会場で浅見さんとはいろいろなお話をしたのですが、
ブログに記事を上げる事を思いついたのが、
ほぼ帰りかけのころだったので、
もっといろいろ伺えば良かったな、と思っているところです。

それに、私はまだまだ人の話しを引き出すのが上手くないです。
インタビュアーとしては、全くダメでした。
つい自分が喋っちゃうのね。

最期にiPhoneで撮った会場の思わせぶりの写真を載せておきます。
ぜひぜひ、会場に足をお運びください。
FullSizeRender

私も描くぞ、パワーを頂きました。