311以降、いくつかのはっきりした事の一つに
この国の男性中心社会の根深さがあります。
私自身は年齢なりの経験から、
そのことはイヤと言うほど思い知らされています。
直近でも、2月には小さな国際会議に参加しました。
途上国も欧米も参加企業の男女の構成比は半々で、
女性もプレゼンターとして話します。
しかし、日本だけ、ネズミ色の背広の男性集団なのです。
多分これは、企業集団において顕著です。
官僚やアカデミーでは、以前に比べ女性の幹部は増えているように感じます。
また、赤松良子氏や緒方貞子氏のようにトップを極める
女性は数えるほどですが、いないわけではありません。
しかし、そういうエリートではなく、
ごく普通の企業や小さな組織、そして政治(特に地方政治)は
ほんとうに女性の進出が遅れている、
と感じますし、実際、OECDなどからも是正勧告がでているようです。
で、7月に政府の対応が大綱で出されるようですが、
しかし、現実は、私の想像以上に過酷だと思い知らされました。
昨日の深夜、NHKスペシャルの
調査報告「女性たちの貧困 ~”新たな連鎖”の衝撃~」
の再放送を見ました。
普通の生活が出来ない女性が増えているのです。
これはほんとうに衝撃の内容でした。
またNHKの取り上げ方にも驚きを禁じ得ません。
番組の冒頭で日本女性の貧困が深刻な事を
数字で示します。
OECDの中で、日本女性の貧困率は50.8%で33位。最低です。
年収200万円以下が289万人。
6割が非正規雇用。
15才から34才の女性にいたっては、200万円未満が81.5%。
番組では、何人かの19才の女性が出て来ますが、
どの女性も過酷な生活を生きています。
ほとんどが母親が離婚していたり、
自分が離婚していたりします。
たとえば、最初に出てくる19才の女性(Aさんとしましょう)は
朝5時からコンビニで働いて月8万円稼ぎ、
49才のコールセンターで働くお母さんを助け、
通信制の高校で勉強し、一日500円の食費で家族の食事も作ります。
また、愛媛の大学に自力で行っている19才の女性(Bさん)は
休みの度に時給の高い東京に出稼ぎに出て来て
学費を稼ぎます。
43才のお母さんは、離婚後ビデオ店で週5日、
夜は弁当屋で9時まで働いて、月15万円がやっと。
電話でお互いを気遣います。見ているだけで涙が出そうです。
しかし、もっと衝撃的なのが、
ネットカフェで暮らす母親と19才と14才の姉妹。
ネットカフェで母子が暮らすなんて、想像を超えています。
その姉妹は、一日に一食コンビニ弁当を2人で食べるのです。
14才がネットカフェで暮らすなんて、
児童福祉とか児童保護法とかどうなっているんだ、という感じです。
さすがに、再放送時には
「現在姉妹は保護施設にいます」というテロップが出ていましたが。
しかし、放送ではさらりと言いますが、
驚くべき事に、
ネットカフェの長期滞在者の7割が女性だそうです。
住民票をそのビルに移せて郵便も受け取れるそうです。
番組の途中から、私の頭にはむくむくと疑問がわき出します。
「父親はどうしているんだろう?」
子どもは女親だけでは生まれない、
父親は何しているのだろう?
離婚したら、全部母親に押っつけて養育費も出さないのか、
という点です。
知人の離婚した女性は、都営住宅でつましい生活を送っていましたが、
子どもの養育費は18才までは父親が出して、受け取っていました。
多くの母親は受け取っていないのですね。
27才の三才のお子さんのいる女性は
一人親世帯の資格助成の制度を使うのですが、
資格を取っている間の生活を楽にしようと
頑張ったおかげで、助成金が減らされ、かえって暮らしが大変になります。
なんと言う制度!
で、もう一つの私の疑問がここで湧きます。最初に出て来た
Aさんも、この27才のお母さんも資格を取ろうと頑張るのですが、
何故か、資格というと、保育士ばかりです。
たまたまなのでしょうか。
保育士の専門学校の学費が三年間で300万円と意外に高いのですね。
保育士は立派な仕事だけれど、
少子化だし、将来のキャリアを考えたら、
もっと、IT技術とか、プログラム作りとか
キャリアに繋がるなるような事も選択肢に出来ないのでしょうか。
番組でコメンテータとして出て来た中央大学の教授が
資格を取ってピンチをチャンスに、
みたいな事を言っていたのにも驚きました。
もし本当にそう思うなら、もっと女性たちにいろんな情報を出してほしい。
それから、24才の大学出の女性は、
奨学金500万円の借金を抱えながら、
就職ができず、アルバイトをしています。
ここでも、お金の問題です。
というか、結局、一人の人間が自立できるようになるには
一定のお金をかけなければならないわけです。
今の日本の母子家庭ではお母さんの年金すら払えません。
すごいのは、最初に出て来たAさんは
保育士の資格の学校にはいる為に、自分で入学式用のスーツを買います。
立派だとは思うのですが、
しかし、放送では、彼女が頑張っている、と伝えるだけです。
ほんとうは、彼女はそこまでしなくても
好きな勉強を出来る状態にするのが、国であり
社会制度のはずなのに、その事は言いません。
最低限の健康な生活を送る権利が国民にはあり、
その事は憲法で明言されていますし、
国はそのために努力しなければならないのです。
NHKは、生活保護制度や年金補填制度などについてすらも伝えません。
生活保護制度を改悪したり額を減らしている政権に配慮したのだ
と思われても仕方のない番組作りです。
日本女性は男性の7割の賃金しか受け取っていません。
しかし、一旦、子どもを持って離婚をすると
すべてが母親の肩にかかります。
先に言ったように、
父親はどうしているのでしょう。
番組の最後の方で、妊娠したのに
パートナーの男性の同意が得られず、
生まれて来る子を里親に出す女性の話しが出て来ます。
テレビでは、タレントの「出来ちゃった婚」が派手に伝えられます。
そして多くは離婚しますが、彼女達は
再び稼げるからいいけれど、普通の女性は
万が一離婚したら、育児と生活で困窮して行きます。
例えば、離婚しても子どもの養育費は、
一定額男親の給料から天引きにするとしたらどうでしょう。
男性も、もう少し女性との付き合いに慎重になるのではないでしょうか。
また、母子家庭には、子どもが学業を終えるまでだけでも、
住居を提供したらどうでしょう。
この番組を見て、いちばんに思うのは、
これほど男性中心社会なのに
男性の責任が全く問題にされないのは、おかしい、という事でした。
もしかすると、逆なのかもしれませんね。
原発事故などを見ても分かるように
責任を取る、という意識が日本男性に根付いてないのかもしれません。
学校での性教育なども敬遠されがちな日本ですが、
妊娠出産が女性しか出来ない事実を
社会全体が受け止めて、男性も、自分が関わる女性の
人生を左右する事に思いを馳せられるように
なって欲しいです。
若い女はセクシーでいなければいけないが
痴漢にあうのはセクシーにしすぎるのが悪いから。
結婚したら、いつ子どもを産むのかと周りから圧力をうけ、
子を生んでも、バギーで電車に乗ると邪魔者扱いされ、
子育て中に何かあれば非難され、
でもいつまでも若くきれいでなければ女ではないと煽られ、
生活に疲れれば、ばばあ呼ばわりされ、
年を取れば、夫の親の面倒まで見ろ、と言われる。
結局、日本が少子化なのは、
基本的な男女間の性の問題があまりに認識されていないうえに
女性だけが、多くを背負わされる事への
女性自身の暗黙のストライキなんだと思います。
いろいろ改悪されている、とはいえ、
日本には福祉制度はまだまだあります。
申請しなければならないシステムが多いはずですが、
でも、権利は使いましょう。
いろんな権利も使って行かないと、
国は必要ないと判断して、無くそうとします。
生活保護だけではなく、年金も補填制度があるし、
私たち女性も、もっともっと情報を集めましょう。
では。
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個展をやります。
<7月16日から21日>
テーマは「KIDS & NATURE」です。
原宿 積雲画廊