カテゴリー別アーカイブ: 本や映画、展覧会、演奏会

藤田嗣治の戦争画、やはり、今見ておきたい。

9月からやっている
「東京国立近代美術館 MOMATコレクション藤田嗣治、全所蔵作品展示」
ようやく見てきました。
20151210

13日までで、残り日数少ないですが、
行ってなくて、行きたい方はもちろん
「南京大虐殺なんてなかった」と言う人も是非行って見て下さい。

もともと近代美術館の常設は見応えがあり、
さらに2012年にリニューアルしてからパワーアップ。

今年は、「東京国立近代美術館 MOMATコレクション『誰がためにたたかう?』
に引き続き、藤田嗣治の戦争画を含む全所蔵作品の展示。

明らかに、時流を読んでの、近代美術館の企画に拍手を送りたい。

以前から近代美術館では、戦争画は藤田に限らず、宮本三郎など、
常に常設で展示していました。
しかし、どうしても、企画展のついでに見る、
という感が否めなかった。

そして見る側も、見てはいけないものを見るような
感覚が拭えなかった。

だから、はっきりと戦争画に焦点を当ててもらった事は
見る側としても『タブーにしなくていいんだ』感が生まれます。

戦争画14点、一挙に展示はさすがに圧巻です。
実は、これらは実質的には「所蔵」になっているけど
戦後アメリカに没収されたものを「永久貸与」という形で
日本に戻されたものです。

近代美術館のホームページには

 1920年代、パリで成功を収めた理由は何だったのか。なぜ日本に戻り、戦争画を制作したのか。戦後フランスに渡り、何を考えていたのか。藤田をめぐるさまざまな問いは、いまもわたしたちに未解決のまま残されています。

と書かれてあります。
私は、偶然にも311の前後に藤田についての本をまとめて読んでいて
その未解決の問いを考えてきました。

長い間、気になる存在でありながら、
日本との関係の複雑さから表立って研究されなかった藤田が、
この10年くらいで注目を集めています。

2006年には、元NHKのディレクター近藤史人氏が番組作りを通じて得た知見をもとに
藤田のまとまった伝記を出版。

2008年には、林洋子氏の「藤田嗣治 作品をひらく -旅・手仕事・日本」
<第30回サントリー学芸賞/第26回渋沢・クローデル賞ルイ・ヴィトンジャパン特別賞受賞作>
が出版され、一気に藤田ブームが到来しました。

小栗康平監督の映画も公開中です。
『FOUJITA』

戦争責任問題で日本を離れた藤田が注目を集めるのと歩みを同じくして
政権が9条を壊す法案を通すなど
時代の動きは一筋縄では行かない、と感じさせます。

今回の展示では、気鋭のキュレーター鈴木勝雄、蔵屋美香、
の両氏が作品解説をしています。
作品解説にしてはかなりキュレーターの見方を織り込んだものになっていて、
賛否両論あると思いますが、
藤田の存在の複雑さを考慮すると仕方ないのかな、
と思わせられました。

ただ、出来たら多くの人に、絵を見るだけではなく、
藤田の自伝や研究書も読んでほしいのです。

そして、一人一人が

藤田をめぐるさまざまな問いは、いまもわたしたちに未解決のまま残されています。

という未解決の問題を考える事が
あの戦争を「新たに」考えるきっかけになると思うのです。

  

ところで、
先日の上野の西洋美術館もそうだけど、
常設企画で所蔵作品を積極的に見せてもらうと、
安い入場料で充実感の味わえる展示になります。
(近代美術館も常設だけだと430円)

これはとても重要な事で、
ひとえに所蔵作品が増えて来ているからで、
美術館の努力に感謝したいと思います。

西洋美術館の所蔵はアジア屈指ということですし、
やはり戦後の日本の発展は、文化の点でも
日本を含めたアジアに貢献していたのだと
確信出来ます。

この視点からも、現政権の戦争へ加担していく姿勢は
非難されるべきです。
平和国家として築いて来た地位と
人類の文化に貢献して来た人々の努力を
ただひとつの政権で、壊してはなりません。

戦争法案を廃止にするために
来年の参議院選挙が重要です。

文化を守るためにも重要なポイントになるでしょう。
肝に命じたいです。

「世界のブックデザイン展」のご案内

今、印刷博物館の P&Pギャラリーで
「世界のブックデザイン展」をやっています。
(入場無料)

初日に見てきましたので、簡単にご案内します。

20151209

私がこの展示を見に行ったのは、
上の写真の一番手前の、武蔵野美術大学造形センターの
「博物図鑑デジタルアーカイブ」(特製本)を見たいと思ったから。

残念ながら非売品ですが、
J.クックの「太平洋航海記」と
D・デュルビルの「アストラブ号世界周航記」の中味は、
スマホ用のアプリで見る事が出来ます。
アプリの表紙↓
20151209_2

ポケットの中の博物図鑑ですね。
飽きずに眺めてしまいそうです。
いい時代になりました。

本のカバーは日本も様々なものが出ていて、
出版社もデザイナーも大変です。
ただでさえ本が売れない時代なので
目だつために、とても高度になっている、
と感じています。

一概には言えませんが、総じて
海外のブックデザインは日本の「目だつ」に比べると
「シック」な感じがします。

今回の特徴は、展示の説明にもあったように、
今まであまり登場しなかった東ヨーロッパなどのデザインが
選ばれていることでしょう。
その中で、私は、エストニアのセト語で書かれた本のデザインが
エスニックでシンプルで気に入りました。

こちらからご覧になれます。
Seto Library series named one of best designed books in the world
民族衣装の刺繍のような模様が素朴でとてもきれいです。

この他にもいろいろ展示されていて、
本好き、絵本好きにはたまらないと思います。

以下は、カナダの絵本のコンテストで上位に入ったもの。
  

オランダ語版の「不思議の国のアリス」
マニッシュでシンプルなイラストが大人っぽくて、良かったです。

実物を実際に手に取って見られるのが嬉しいです。
写真は撮影出来ませんし、
筆記具は鉛筆のみです。

アクセス
総合展示は
開館時間 10時~18時(入場は17時30分まで)
休館日 毎週月曜日(ただし祝日の場合は翌日)
入場料
一 般:300円(250円)
学 生:200円(150円)
中高生:100円(50円)
小学生以下無料
( )内は20名以上の団体料金

関連記事
印刷博物館、デートに良し、ファミリーでも良し、自由研究にも良し、楽しめる。

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<来年のカレンダーがまだの方へ>
おすすめ猫の日めくりカレンダー

猫の飼い主が撮った心温まる写真に、
飼い方や様々な情報がちりばめられたおすすめの日めくりです。
猫が可愛いだけではないのがとてもいいです。
英語もそれほど難しくないので、英語の勉強にもピッタリです。

上野から日暮里までスマホ散歩。430円でルネッサンスから現代美術まで(5日までの期間限定)

今日は430円で、ルネッサンスから現代美術まで楽しめる
美術散歩のご案内です。
ただし、12月5日(土)および12月6日(日)までの期間が短い展示が有りますので
ご注意ください。
私自身、期間が短いので、飛んで見に行ったのです。

場所は上野から日暮里駅まで。
下の地図で①から⑦まで行きます。
20151202-1

①上野駅

②国立西洋美術館 常設展(430円)
フェルメールに帰属するといわれる《聖プラクセディス》の展示

③東京都美術館 (どちらも無料で12月6日(日)まで)
ギャラリーA「忘れたと思った?」
ギャラリーB「東北画は可能か?」

④芸大美術館 (無料で12月6日(日)まで)
東京藝術大学大学美術館で藤田嗣治 《舞踏会の前》 修復完成披露展と遺品を公開展示

⑤スカイ・ザ・バスハウス(12月5日(土)まで) 
李禹煥リーウーファン展「色のハレーション / 空間のハレーション」

谷中霊園参道散歩

⑦天王寺 日暮里駅

順当に歩いて4時間くらいでしょうか。
以下、スマホ散歩です。
昔は西洋美術館は写真が撮れなかったけど、
今はフラッシュを焚かなければOK。
ただし、所蔵作品に限りますので、
表示に気をつけて下さい。

国立西洋美術館
現在の企画展は「黄金伝説」
IMG_2031

私のお目当ては、↓こちら。フェルメールに帰属するといわれる《聖プラクセディス》の展示
IMG_2034

常設の一番奥に有りましたが、
写真は撮れませんでした。
この絵は、フェルメールに帰属する、
という注釈がついているのは、真贋について
研究者の意見が一致していないからなのね。

2014年に個人収集家がこれを入手して、
西洋美術館に寄託。
皆さんはどう思いますか、という意味を含んでいるらしいです。
説明のリーフレットを読むと、
白色顔料の鉛白の同位体分子からオランダのフェルメールの時代のもの
と極めて近い、ということは分っているけれど、
フェルメールだと言う決め手は無い。
私は、フェルメールにしては上に乗っている左手のデッサンが変ではないかな、
と思ったのね。
さて、真実はどこに?

久しぶりに見た、西洋美術館の常設。
幾つかご紹介します。

この人が、西洋美術館の基本となった松方コレクションの松方幸次郎氏。
IMG_2062
松方コレクションの数奇な運命は是非西洋美術館このページを読んで下さい。

美術館の外にはロダンやブールデルがあります。
これらもゆっくり見たいです。

↓ロダンの「地獄の門」
IMG_2035

↓ブールデル「弓を引くヘラクレス」
IMG_2037

ルノアール「アルジェ風のパリの女たち」
IMG_2042

おなじみモネの「睡蓮」
IMG_2047
この絵はモネの部屋にあって、
モネは本当に楽しそうに絵を描いていたんだな、
と思わせる作品ばかり。
アイリスやシャクヤクの咲き乱れた、「モネの庭」。
モネは自分でずいぶん庭仕事をして過ごしたそうで、
それをモデルにした公園が高知に有ります。
北川村モネの庭

さらに進むと美術館の中庭が見えます。
IMG_2053

そして奥の印象派以前の部屋で見つけたかわいい一品。
ルーベンス「眠る二人の子ども」
FullSizeRender

習作のような筆致ですが、それがまた子どもの寝息まできこえそうで、
可愛い。
でも、よく見ると右側の子どもは、薄目を開けて見ているのね。
ささっと描いているルーベンスを見ていたのかな?

そしてもうひとつのお気に入りは、女性画家の22歳の時の自画像。
このくらい美人だと、自分を描いても楽しいでしょうね。
マリー・ガブリエル・カペ「自画像」
IMG_2057

これ以外にも静物画風景画、セガンティー二やドニまであって
私はたっぷり2時間見てしまいました。
これで430円は安いです。
常設はおすすめです。

さて、色づいている公園を横切って、
IMG_2073

東京都美術館へ。
「忘れたと思った?」と「東北画は可能か?」のグループ展示です。
IMG_2090

「東北画は可能か?」は見に行くつもりでいたら、
たまたまお隣で、美学校出身者によるユニットの作品展があることも知り、
両者のあまりの違いに、表現の奥深さに心打たれたかも。

「東北画は可能か?」
IMG_2080
やはり2011年3月11日の東日本大震災抜きには語れないです。
思いのたけが詰まった迫力の一点。
IMG_2083

「忘れたと思った?」
FullSizeRender
ギャラリーは地下3階。地下1階から眺められます。
銀河のよう。
IMG_2091

比較するものではないし、偶然とはいえ、
全くアプローチの違う二つの世代の近いグループが
隣り合って展示している、
ということがすごく意味があるような気がするので、
おすすめです。

「東北画は可能か?」は図録が素晴らしい。
「忘れたと思った?」はイベントがあるようなので、上のサイトでご確認を!
どちらも6日まで。

さて、次は、芸大美術館の藤田嗣治。
IMG_2092

《舞踏会の前》の作品修復過程の解説と修復後の作品の展示。
さらに、美校時代に描いた自画像やお父さんの肖像画。
技法の解析も興味深かった。
実は資料の方は、藤田に関する本を何冊か読んでいたので
既視感があったけど、
修復の方は、色々な技術的なことが分かって
いま自分の試していることにも役立ちそうで、
ほんとに行って良かった。
こちらは6日まで。


芸大を出て、谷中に向かう風景は、
まさに「谷根千」。
左右に面白いお店があるけど、
結構車の通りが激しいので気をつけて。
これはお菓子屋さん。
IMG_2097
ただ、昔ほど昭和の雰囲気はないですね。
ちょっとそこが寂しい。

最後は現代美術の大御所。
IMG_2107
バスハウスって、昔のお風呂屋さん跡ね。
もちろん、バウハウスももじっているのだろうと思われ。
ハレーションを起こした作品が外からも見えます。
こちらは5日の土曜日まで。

このあとは谷中の霊園の中を通って行きます。
IMG_2112

こんな昭和の建物も残っています。
お茶屋さんや石屋さん。
FullSizeRender

実は、私の両親のお墓がここにあるので、
私は時々来ています。
しばらく来なかったので、今日はお掃除しました。

ここの霊園は有名人のお墓がかなりあります。
珍しいところでは、お茶の水のニコライ堂をたてたニコライさんとか。
上の⑥番のリンク先に詳しいです。

通りの突き当たりは、古刹の「天王寺」。
IMG_2120
造り直して、マンションの入り口みたいになっていてビックリ。
谷中霊園の通りは、この天王寺の参道でもあって、
桜並木なので、春はきれいですよ。

天王寺の塀に添って進むと、日暮里の駅が見えてきます。
IMG_2121
タワーマンションもいつの間にか出来て、
あまりの変わりようにちょっとクラクラしました。

というわけで、無事日暮里駅に到着。
お疲れさまでした!

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キュレーションという言葉を体感した日

いま、知人のムカイヤマ達也さんが個展をされています。
ムカイヤマ達也 個展「画布を分つと二つになる」展
前回の個展から半年もたたず、
新作17点を引っさげての個展です。
すごいエネルギー。

12月8日(火)までなので、
行かれる方はお早めに。
IMG_2019

実は、土曜日28日のトークに参加したので、
そのことをかきます。

翌日、下の為末さんのブログを読んで、
いろんな記憶が結びついたのでそれも含めて書きます。
TAMESUE 2015年11月29日 狙う姿勢

この記事は長くなる予感。(笑)

ムカイヤマさんのフェイスブックを見たら、
トークで話す内容と登壇者が出ていて、
気になる言葉があったので、これは行って来なければ、と行ってきました。

日 時:11月28日(土)18時〜
登壇者:野田尚稔(世田谷美術館 主任学芸員)
    ムカイヤマ達也
    青木彬
▼こんなことを話す予定です▼
・分断への抵抗
・絵画の条件
・母性 / 父性的作品
・個人 / 孤人
・共身体
・絵画の構造と主題の関係性
・虚構について
・フレーム

どの言葉が気になったのかというと
・絵画の条件
という言葉。

自分の話になるけど、311にほぼ10年の休眠から目覚めて
制作を再開した時、当然私は浦島状態でした。

もちろん、絵の世界ははるかに進化していて、
しかも、アートの世界は
「何でもあり状態」に突入していた。
私はほとんど精神的には混乱状態。

ただ、こういう時に慌てても仕方ないので、
とにかく「千里の道も一歩から」を
モットーにスケッチから出直して行きました。

過ぎてみれば、結果的にそれは正しくて、
いま私は活動休止したときよりは
ずっと前に進んでいる。

ただ、この間、ずっと考えて来たのは
その何でもあり状態でも、絵の本質とはなんなのか、
「絵とは何か」「絵の条件とは?」
ということでした。

で、ムカイヤマさんが「絵の条件」という内容で話す、
ならば聞きに行かねば、と思ったわけです。

2時間あまりのトークの最後にムカイヤマさんは
おもむろに「絵の条件とはなんでしょうか。」と切り出されたのですが、
それは、ムカイヤマさんが今、鈴木忠司さんの本を読んでいて
本の中に「演劇の条件」という言葉がよく出て来るので、
では、「絵の条件」「これこそが絵の本質だ」ということはなんだろう、
と思ったのがきっかけだったそうです。

で、鈴木忠司さんは
「演劇の条件、これがなければ成り立たない、というのは俳優だ」
と書いているそうです。

このあと、会場の皆さんがそれぞれ「絵の条件」について語ります。
「見ること」と言う方。
「これが絵そのものだ、と思うこと」という意見も。

哲学的形而上的な意見が多かった中で、
なんと私は「描くものと、描かれるものがあること」
という大変即物的な答えを出しました。
私の答えに異を唱える方もいらした。
そのくらい即物的だった。

ただ、私はこのとき、ただ一人、そこにいる誰もが見ていない情景を
思い描いていたのです。

鈴木忠司さんは「演劇の条件は俳優だ」
と書いている、と聞いた時、
私は、遥か十数年前に見た、鈴木忠司氏の演出による白石加代子の
一人芝居を思い出していました。

それは、白石加代子が、古い民家の床を舞台に鯵の干物を食べる、
というものでした。

でもそこにいるのは、白石加代子だけ。
鯵の干物もごはんもない。

でも、確かに白石加代子は、私の目の前で、
鯵の干物を食べているのです。
骨の一本一本までお皿の縁に並べて行く。

「見えるよう」という表現があるけど、
そうではなくて、実際にそこで食べているのね。

そのくらい迫真の演技でした。

確かに、俳優しかいなくても演劇は成り立つのだ、
と、私は、その場面を思い出して、
「そうか、そういう事か」と思っていたわけです。
つまり、鈴木忠司のいう「演劇の条件」とは構成要件のことなのだ、と。

そしてその当たり前だと思っている構成要件は、
当たり前すぎて問われることもないが、
しかしそれがなければ成り立たないものなんだ、
「ああ、絵もそうだ。描くものと描かれるものがあれば成り立つんだ」
と思い至って、
すごくストン、とそしてあまりにアッサリと311以降考えて来たことの
ひとつの答えに、唐突に出会ってしまった。

当たり前過ぎるほどの条件。
ピアニストにとってのピアノ。
木彫家にとっての木とノミ。
文筆家にとっての言葉。

「何でもあり状態」の絵の世界も同じなんだ、と。

さて、先の為末大さんの狙う姿勢というブログには、
何処かに行くとき狙う姿勢がある人は、
漫然とそこにいる人より上手く行く、
ということが書いてあるのだけれど、
まさに、土曜日の私がそうだったな、
とブログを読んで思ったわけ。

「絵の条件」という言葉をずっと考えて来たから
その言葉にひかれてトークを聞きに行き、
そこで、私は思わぬ拾い物をしてしまった。

ところで、28日のトークには
お2人のキュレーターの方が参加して
有意義なお話を聞かせて頂きました。

美術館の学芸員が本義だったキュレーターという言葉。
すっかりIT用語になっています。

ことバンク キュレーション

アマゾンでキュレーションを検索してみました。
IT関連の本がたくさんでています。
キュレーション

便利で、新しい言葉なので、
キュレーションは情報の精査と再構築、
という意味に使われているようです。

こんなページもあったし、
以下のように書かれているから間違ってないと思うけど、
ITでありながら、結局最後は人間の勘やら経験やらを使って、
という意味であることは確かみたいですね。

Manual database curation involves the following steps: (1) finding articles of interest; (2) finding and extracting facts (relations, events, associations, etc.) relevant to the database focus; and (3) converting extracted information into predefined …

情報の海を結局最後は人間が捌く。
そのバックグラウンドには、経験などの身体性が求められるのは
言うまでもなくて、
ただネットの海に転がっている情報を集めてきて(A+B)÷C=D
にすれば良いのではないはず。

まさに、キュレイトの本来の意味である「司祭」みたいな作業です。
つまり、本来あったけれど見えていなかったものを選び出して伝える役目。
これこそ、森有正のいう「体験が経験化する」ことで、
私の経験はキュレーションそのものではないのか。
バッハ弾きでもあった森有正のパイプオルガンが聞こえてきそうな日でした。

ムカイヤマさんの個展の話しが自分の経験の話しになってしまいました。

ムカイヤマ達也 個展「画布を分つと二つになる」展
12月8日(火)までです。
皆様是非。

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ウォーターボーイズの街の美術展と、川越スマホ散歩

先日、蔵の町「川越」に行ってきました。

私のおめあては↓こちら、蔵ならぬ、美術館でした。
IMG_1873

川越市立美術館で開催中の「ペインティングの現在」。

IMG_1875

折角、歴史ある川越に来たので、
展覧会の後で、川越の町のスマホ散歩に出かけましょう。

さて、
大きくはない美術館ですが、地下の特別展示の
展示はなかなか充実していました。

この展覧会に出品されている4名は埼玉在住の方たち。
それ以外は、絵の傾向も年代もバックグラウンドも異なり、
まさに「ペインティングの現在」の多様性を証明するかのような4作家です。

小さな美術館にエッセンスを詰め込んだような展示となっており、
今回の企画展のキュレーターの方は実にいいお仕事をされたな、
と思いました。

↓こちらの説明が端的な気がしますが、
ペインティングの現在-4人の平面作品から-
しかし、圧巻は、会場の一番奥に飾ってある、浅見貴子さんの
縦265センチ横570センチの大作「桜木影向図」(さくらぎようごうず)。
極限までに描き込むことを押さえた悠揚とした空間は見事です。
これは一押しです。

横山祐和さんのスケッチも素晴らしく、
墨も使われて、森の空気感を風を掴むように捉え、
油彩と墨絵の境界が曖昧になる感じ。

そして若手の、
一方はフラットでマチエールを一切消したかのような荻野僚介さんの作品と、
方や、絵の具をその存在を確かめるかのように、
チューブから出したままを重ねていく高橋大輔さんの作品。

実は、今回、私の友人がこの高橋さんの作品のコレクターで、
そちらからもお知らせを頂いていたので
この展覧会、パスするわけには行かなかったのですが、
とても楽しめました。

先に述べたキュレーションと作品のコレクションの話しは
別の記事で扱いたいと思います。

展覧会は是非本物を見て頂きたいです。
会期は、12月23日(水曜・祝日) まで。
ワークショップや作家と話す機会もあるようです。

さて、美術館を出て、川越スマホ散歩に出発です。

道路を挟んで向かい側にあるのが、
かの男子のシンクロナイズドスイミングの
「ウォーターボーイズ」で有名な川越高校。
IMG_1878

川越高校、有名人もたくさん輩出していて、
なんと言っても旬なのはこの方。
IMG_1880

川越高校の側で見つけた、郵便ポスト。
IMG_1882

徳川家光が生まれ部屋がある、喜多院。
IMG_1892

喜多院の本堂。
IMG_1905

喜多院のお庭。
IMG_1908

つくばいも。
IMG_1909

そして五百羅漢。
IMG_1911

街道沿いにはお蔵が。
IMG_1914

街を巡るには、二つの会社が「小江戸巡回バス」を運転しています。
IMG_1868

私が乗ったのは、残念ながらボンネットバスではありませんでした。
IMG_1869

バスの運転手さんは、バスガイドもしてくれます。
一日乗り放題もあるので、
バスで一回りしながら、
私が今回は行けなかった、蔵町にも是非。

詳しいことは駅の案内所で教えてくれます。

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映画「セバスチャン・サルガド」、人間を写し続けた報道写真家が自然と大地に包まれる

ヴィム・ベンダースが共同監督をつとめる
ドキュメンタリー映画「セバスチャン・サルガド」のご紹介です。

ロードムービーの巨匠として名を馳せたベンダースは
「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」などの
ドキュメンタリーでも秀作を残しています。

今回はブラジル出身の写真家「セバスチャン・サルガド」がテーマです。

恥ずかしながら、私は、この報道写真家として数々の賞に輝く写真家について
ほとんど知りませんでした。

たまたま塚本晋也監督の「野火」を見に行った帰りに
文化村で上映されていることを知り、
ようやく10月に入って他館に移った時に見ることができました。

「野火」の話しも記事にアップしたい。でも今日は「サルガド」。
とにかく素晴らしい。
その写真はもちろん、その生き様が。

今は、ツイッターなどでも(多分加工した)夢のようなカラフルな写真が
流れてきます。
しかし、セバスチャン・サルガドの写真は一貫してモノクロームです。
彼のパリのスタジオの壁には所狭しとモノクロームの写真がびっしりと貼られています。

墨の世界には「墨に五彩あり」という言葉があります。
黒から白だけの世界が雄弁に語りうるからです。

と言っても
サルガドの作品は、モノクロームが色を語る、ともちがい、
光が語っているのです。
光を捉える写真の原点がそこにあるような美しさ。
ただ、あまりにきれいで、虐殺などを写しても別の世界のように感じてしまうほど。

虐殺、と書きましたが、サルガドの報道写真家としての姿勢は常に
マイノリティーへむけられ、世界の片隅に生きる人々を写し取るものです。

建築家の妻レリア(この人がすごい)と二人三脚で、
数年単位でプロジェクトを立ち上げ
「アナザーアメリカ」「サヘル」「ワーカーズ」といった、
飢餓に苦しむ人々や金鉱で働く人々を写して行きます。

多くは飢饉や内戦に巻き込まれた人々や
厳しい労働環境の働く人々なので
社会的使命が彼を突き動かすのでしょうが、
見ている方が息苦しくなるようなシチュエーションも少なくありません。

そしてルワンダの大量殺戮の撮影に費やす日々にサルガドは
その残酷さに自身が疲弊してしまうことになります。

そして、人間社会の残酷さから自然界の豊かさを求めて
新しいプロジェクトを始めた……

という話なら、
ありそうな話しなのですが、

サルガドのすごいところーー実はこれは妻のレリアのすごさでもあるのですが、
はもっと壮大なストーリーを作り上げてしまうのです。

ここからはまるまるネタバレです。
と言ってもサルガド自身が語る自伝も出ているようですが。

ルワンダの虐殺で疲弊したサルガドは
その時ちょうどご両親の体調が悪く、故郷のブラジルに戻ります。
ただ、そこで見たものも、小さい頃サルガドが見た豊かな故郷ではなく
あちこち禿げ山が出来た赤い大地でした。

ところが、ここで妻のレリアが冗談みたいな提案をします。

彼らは「植林」を始めたのです。

年譜を見ると、1994年くらいから始めたようで
1998年には大西洋岸森林再生プロジェクトが軌道に乗った為に
レリアとインスティテュートテラを設立とあります。

そして、2004年からこの映画のテーマにもなっている
「ジェネシスGenesis」プロジェクトを始めます。
世界中の動物や原住民や自然をカメラに収めるプロジェクトです。

Genesisは、聖書の創世記のこと。
旧約聖書の冒頭で、
天地創造の冒頭の部分を含むものです。
  1日目 暗闇がある中、神は光を作り、昼と夜が出来た。
2日目 神は空(天)をつくった。
3日目 神は大地を作り、海が生まれ、地に植物をはえさせた。
4日目 神は太陽と月と星をつくった。
5日目 神は魚と鳥をつくった。
6日目 神は獣と家畜をつくり、神に似せた人をつくった。
7日目 神は休んだ。

というこれですね。

ベンダースは、映画で、サルガドの撮影した写真とともに
サルガドのインタビューを織りなすようにはさんでいきます。
そのインタビューやジェネシスの撮影に同行して
サルガド自身を撮影するのが
サルガドの息子でこの映画の共同監督のジュリアーノ・リベイロ・サルガドです。

で、レリアの提案した植林は立派な森へと成長して行きます。

実際自分達の育てた森の木々を愛でるサルガドが出て来るのですが、
20年もたたずに森になるのか、という疑問はあります。
日本でいうと、明治神宮の森が100%人工の森ですよね。
あの森が約100年。

サルガドたちは150種類ぐらいの植物を土地にあうものを選んで植えたそうで
20年もあれば、それなりになるのかもしれません。
実際フィルムに写っている森は立派な森でした。

映画では詳細は語られていませんが、
レリアとともに作った森は国立公園になっているそうです。

そこで検索してみたところ出てきました。
The Instituto Terra

“Do you Know what is possible to do in 15 years?”

とあります。

本も出ています。

人間、やろうと思えば出来るんですね。

私はこのサルガドの森の物語を見て、
振り返って日本のネイチャーリテラシーの貧弱さを痛切に感じてしまいましたね。
三陸海岸に海が見えないほどのコンクリートの堤防なんて作っちゃって、
実は津波からは植林で守ろうという話もあったのに。
日本の自然利用の行政や政策を見ると、
余りに知恵がなく、自然を活かせず、
はらわたが煮えくり返るようなものばかりです。
ドメスティックおじさんたちは、壊すことしか知らない。
一度壊したら戻すのが大変。

しかし、サルガドのプロジェクトは、
心ある人間が取り組めば、自然も回復できる,
という希望の光を示してくれているようです。
(だからといって、ドメおじさんたちは許せないけど。)

ここまで書いて来て、ふと思い出して確か日本にも
「森の長城プロジェクト」ってあったような気がして調べたら、ありました。
「森の長城プロジェクト」
こちらにも、20年で森になる、とあります。
本当はこういうことを税金でやるべきなのではないでしょうか。

さて、話しを映画に戻します。
是非多くの人に見てもらいたい映画です。
公式サイト

まだ各地で上映されるようなので、
私はもう一度見たいですね。

それから、サルガドが取り組んだルワンダの虐殺時に
人々を救うことに奔走する人がテーマの「ホテルルワンダ」。これも必見です。

↓公式ツイッター

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10歳以上のすべての人へ、数学が楽しくなる本「数の悪魔」をご紹介

最近読んだ10歳以上のすべての人が読める数学の案内書「数の悪魔」をご紹介します。

実は今日11月2日は、
コンピューター理論の基礎となった「ブール代数」を考案したイギリスの数学者、
ジョージ・ブールのお誕生日らしい。

生誕200年を記念してグーグルのトップになっています。
George Boole’s 200th Birthday Doodle

グーグルドゥードルについての説明は、↓のサイトが詳しいです。
世界のGoogleトップロゴ観察

この「数の悪魔」の帯には、数学者秋山仁先生の
「悪魔という天使があなたを数学のパラダイスに誘う!」
というキャッチが踊っています。

ところが、「数の悪魔」は実は数学者が書いた本ではないのです。
著書のハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー氏は
戦後ドイツを代表する詩人であり作家であり批評家。

構成は、数学嫌いの男の子の夢に、夜な夜な「数学の悪魔」が登場し、
「1」の不思議や「0」について、
そして素数、フィナボッチ数列、無理数、多面体リング、トポロジー、
などの課題を十二夜に渡って講義するというもの。

「計算は電卓がすればいい」という悪魔が、
夢の中らしく、小さくなったり巨大になったりしながら
ヤシの実やうさぎを使って分りやすく説明してくれるのです。
画家のベルナーのかわいい絵も手伝って
相当数学苦手な人でも読んでしまえる楽しさがあると思います。

今回この本を読んだ私の感想は一言。
「数字、ってすごいなあ。誰が考えたんだろう」でした。
子どもみたいな感想ですが、
数字の不思議がいっぱい詰まっていて、
「数字」の存在自体に脱帽した、という感じ。

私も一応高校で三角関数などはやっているわけです。
そして数字が既にあることに疑いもせず計算していた。

しかし、この本読んで、「数字の存在自体が不思議で一杯」。
もしかすると人間の存在以前から数字ってあったんじゃないか、
たまたま人間が見つけたのかもしれない、
という思いにかられたくらい。

204ページに、多面体リングの平面図が載っていて
さっそくそれをコピーして作ってみたら、
10個のピラミッドが連なったリングが本当に出来ました!

FullSizeRender

お子さんのいる方は一緒に作ってみたらいかがでしょうか。
実はこれは挑戦して3個目。
最初はコツが分からず、最初からリングにしてしまって四苦八苦したのですが、
9個のピラミッドを作ってから最後に繋げて輪にすると上手く行きます。
くるくる回るし面白いですよ。
お試しあれ。

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