驚異の生態をドローン映像が捉える、映画「ミツバチの大地」

去年見た映画で、評をを書こうと思っているうちに時間が過ぎてしまったのだけれど、
「官邸ドローン事件」で思い出したので、
映画「ミツバチの大地」について書いておきます。

実はこの映画は、
秀作ドキュメンタリー映画 その①「鳥の道を越えて」
の前に見ていて、
秀作ドキュメンタリー映画 その②、とでも題名をつけるはずでした。

この映画は、
一言で言えば、ドローンだけではなく、
様々なハイテク映像や機器を使って、
ミツバチの生態に迫る映画です。

特にドローンを使って撮影した
ミツバチが飛びながら交尾する場面は、
多分世界で初めて捉えられたものでしょう。

この映画のマークス・イムホーフ監督のお祖父さんが
養蜂に関わっていて、話しはそこから始まります。
監督はミツバチを巡る現在の状況を捉えるために、
世界を4周してこのドキュメンタリー映画を作ったのだそうです。

「ミツバチの大地」公式サイト

見どころはいくつかあります。
1)小型ヘリコプターや無人偵察機(ドローン)、そしてマイクロレンズを使った、ハイテク映像。
2)ミツバチの生態とその驚異的な働きを知ることができる。
3)人間とミツバチの切っても切れない繋がりが確認出来る。

そしておまけですが
4)世界の食料庫と言われるアメリカの大規模農業の
意外なほどの脆弱さが垣間見られ、考えさせられます。

さて、ハイテク映像について。
この映画の撮影について(公式サイト)
以下のポスターはまるでイラストのようですが、
飛ぶミツバチをドローンで並走させて撮影します。
ミツバチというのは、空中で交尾するのですね。
その映像も見事に捉えています。

    

また、監督が撮影に地球4周するには訳があって、
様々なミツバチのエピソードが紹介されます。

ミツバチの能力について。
ミツバチは自分の位置をどうやって知るのか、
仲間への情報伝達はどうやるのか、などは
ドイツ自由大学の神経生物学者のメルツェル教授のフィールドワークが紹介されます。

アメリカと中国にはミツバチがいないという驚きの話しも。

中国では毛沢東の時代、穀物を食べるからとスズメが徹底的に駆除されたために
昆虫が大繁殖してしまい、それをまた駆除するために大量に農薬が使われたそうで、
そのためにミツバチがいなくて、人間が受粉作業をするらしいです。

そして、実は、新大陸にはミツバチはいなかったので、
カリフォルニアアーモンドやらアンズの花の受粉のために
毎年ミツバチが輸入され、養蜂家が花が咲く時期に合わせて
トラックでミツバチを運んで受粉させる、のだそうです。

その一方で、女王蜂を育て、世界58カ国に輸出しているオーストラリアの養蜂家母娘は
手作業で働き蜂を女王蜂にしていきます。

片やトラックで巣箱を運び、片や拡大鏡で覗いて働き蜂を女王蜂にする。
そのギャップが興味深かったです。

ところで、この映画の最期には、
ミツバチの免疫システムを研究しているバーバラ・イムホーフ博士が出て来ます。
監督の娘さんです。
監督のお祖父さんの話しから始まった映画は
自分の娘さんへ、そして孫へと引き継がれるところで終わります。
家族史の面も持つ映画なのですね。

さて、「官邸ドローン事件」で、
ドローンは一気にネガティブな印象が植え付けられそうですが、
この映画のミツバチとの並走だけではなく、
「鳥の道を越えて」にも空撮がありました。
ドローンはもう映像の世界ではなくてはならないものになっていると思います。

それにしても、ドローンひとつで上へ下への大騒ぎになる官邸、
とても、自衛隊の海外派兵なんて、出来るとは思えませんけどね。

(参考)
ネオニコチノイド、ミツバチ大量死の原因とされる農薬がカナダ・オンタリオ州で規制