<本の紹介>『画家たちの「戦争」』

川内原発へのパブコメは昨日出しました。
3つほど書いたのですが、どれも
「ゆえに再稼動はするべきではない」
と締めくくりました。

さて、今日は8月15日。
「終戦記念日」ですけれど、ちゃんと言えば敗戦記念日です。

今日ご紹介するのは、
「画家たちの「戦争」」と言うムック本。
新潮社の「とんぼの本」シリーズのひとつです。

戦争画に関しては、
タブーらしくてなかなかまとまった本が無いのですが、
このムック本は、日頃は目にすることの少ない
代表的な戦争画が網羅されて印刷されている
貴重な本だと思います。

私が戦争画に興味を持ったのは
実は藤田嗣治の伝記を読んだことがキッカケでした。


この本は第34回(2003年) 大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しています。
著者の近藤史人さんはNHKのプロデューサーで、番組制作のことで
藤田の本を書くまでになります。

乳白色の肌の女性像や猫の絵で有名な藤田ですが、
実は、戦争画でもその存在感は並外れています。
戦争画を描いたのは彼ひとりではないですし、
宮本三郎の作品なども近代美術館に収蔵されています。

また、画家だけではなく、林芙美子のような小説家も
従軍して作品を書きます。

簡単に言ってしまえば、
国はプロパガンダに芸術家たちをかり出して行くわけです。
しかし、今日ご紹介するムック本の絵を見ると
単なるプロパガンダではなかった、画家たちの観察眼と絵のチカラに
圧倒されると思います。

しかし、むしろ戦後の方が問題は複雑でした。
結局、その戦争画における責任をひとりで背負う形で
藤田は戦後日本を負われ、フランスで洗礼を受け
かの地で「レオナール藤田」としてこの世を去ります。

藤田のことはいろいろ書きたい事があるのですが、
それは別の機会に譲ります。

話しを戦争画に戻すと、
私がこの藤田のまとまった自伝を読んだのが
2011年の2月でした。
その一ヶ月後に震災が起き、そして福島第一発電所の事故。

戦後、藤田が取り巻かれる状況と
そっくりな状況が現実の日本社会で起こって行くのを見て、
デジャヴュが私を襲います。
そこで探したのが、最初に紹介した「画家たちの「戦争」」でした。

表紙からして藤田の「アッツ島の玉砕」の一部ですし、
最初の見開きは「これが戦争画だ」と言うキャプションとともに
映画のワンシーンのようなアップ画面。
この「アッツ島の玉砕」は群像図としても傑出していると思います。

日本画の川端龍子や、戦後は田舎の茅葺き屋根の風景を描き残した
向井潤吉の絵もあります。

趣の変わった画集ですから、見て頂くのが一番だと思います。
全体的に色は暗いけど、傑出した画家の絵ばかりで、見応えあります。
画集としても質の高いものでしょう。

また、解説は、学校では習わなかったような
かなり新鮮に感じる内容もあり、興味深いです。

目で見える「戦争の証拠」でもあるので
是非多くの人に手に取ってもらいたいです。

なお先のご紹介した藤田の自伝も
なかなか日本人について考えさせる本で、お薦めです。

で、告知です。
美術評論家で沖縄県立芸術大学准教授の土屋誠一氏の呼び掛けに応じて
「反戦――来るべき戦争に抗うために」展 に参加します。
「反戦――来るべき戦争に抗うために」展 展覧会呼びかけ文 を読んで、3日ほど考えて、出品を決めました。

藤田嗣治の自伝を読んでいなかったら
私は出品しようとは思わなかったかもしれません。