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中東の歴史を聖書から読んでみた

シリア情勢が緊迫していますね。

イギリスは下院で軍のシリア派遣が否決され、
国民もダウニング街に「NO, ATTACK」のプラカードを掲げて
デモが行われ、キャメロン首相は「議会と国民の決定に従う」
と表明しました。

米仏がどうなるのか。
石破幹事長は、証拠があればアメリカ支持と表明していますが、
なんだかなあ、と思います。

というのも、中東の歴史を少しでもかじると
欧米のやりたい放題が結局今の混乱を招いているんだな、
ということに気づかされるからです。

5年くらい前に、イスラエルとパレスチナ問題が全然分からなくて
3ヶ月くらいかけてざっとですが、聖書の時代から数冊の本を読みました。

けっこう大変でした。
聖書には、似た名前の人が入れ替わり立ち替わり出てくるので、
下のような系図を作って読んでいました。

stem

これはアダムとイブからモーゼまでのおおざっぱな系譜。
最初は色違いにして分かりやすくするつもりだったけど、
読み進むうちに、あまりに複雑で、途中から鉛筆書きだけになっています。
時代が下ると、2枚目3枚目にダビデやソロモンが出てきます。

実は私がここまでやったのには、
西洋絵画の理解にも聖書の知識は必要なので、
一度は概要だけでも掴んでおこうと思ったからです。
特に、2008年に夫とイタリア旅行に行って、
久しぶりにシスティーナ礼拝堂などを見学した後でしたので、
画集などを見ながら楽しく読み進めることが出来ました。

システィーナ礼拝堂の天井画には旧約聖書の予言者が何人か出てくるのです。
その役目なども知っておきたいとも思いました。

ところで、この9月6日からはミケランジェロ展が西洋美術館で開かれます。
重要な素描の数々や、レリーフも見られるようですね。
今年は「日本におけるイタリア2013」で、その一環のイベントです。

さて、話を中東の歴史に戻しますが、
聖書から読むのは大変だけど、
西洋文化の理解は格段に進むと思います。
結局ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も
異父兄弟みたいなものです。
それに私達の今の生活も、
ほとんどキリスト教文化から生まれたものばかりです。
そしてキリスト教はユダヤ教がなければ生まれなかったわけで、
池澤夏樹は
「ぼくたちが聖書について知りたかったこと」という本のまえがきで

キリスト教の前にはユダヤ教がある。その後にはイスラム教が生まれた。ユダヤ人のいない西洋史はあり得ない。文化に対して、あれほど少数の人々があれほど大きな影響を与えた例は他にないし、それは今も続いている。イスラエルなき現代史は意味をなさない。」

と述べています。

今は「イスラム=テロ」みたいな認識が広まっていますが、
なぜそうなったのか、テレビやネットだけでは分かりずらいです。
イスラエルとの関係も複雑です。

参考までに私が読んだ本の幾つかを紹介しておきます。
下に紹介した以外にもドレの絵に山室静氏が文章をつけたバージョンが家にあったので
ドレの劇的な絵を見ながら読み進めました。

ちなみに、我が家では、夫の方が圧倒的に社会問題については詳しいですが、
こと中東の歴史と聖書に関しては、最近は私がかなり新聞などと違う意見を言うので
煙たがられています。

聖書に関してはいろんな本が出ています。
私は探していた時に、たまたま本屋さんでこの本を見つけました。
分かりやすさ重視です。

↓エルサレムの問題に特化した本。
結局旧約聖書の時代から出てくるので
聖書の知識は必須。
地図も入って、エルサレムとはどういう街なのか
がよく分かる本です。
私は上のムック版を読みましたが、新書判も出ているようです。

イスラム問題の流れが分かる本。
911以降に買って積んどいたものでした。
これは少しデータが古いので、読んでいませんが同じ著者の本をもう一冊上げておきます。

シリアの化学兵器を誰が使ったのか分かっていません。
誰が使ったにせよ、他国が攻撃すれば、罪のない市民の犠牲者が出ます。
その事が一番悲しいです。

お薦め本〜辻邦生「背教者ユリアヌス」


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この記事は5月の連休用に4月26日にアップした記事なのですが、
最近、スパムのターゲットにされているので、
一端削除し、再掲します。

連休に限らず、是非読んで頂きたいお薦め本の一冊です。

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今日、羽田モノレールに乗ったら
大きなキャリーバックを引っ張っている人たちに
会いました。

……で、
「あ、連休なんだ」と思い出しました。

といっても、
私は混んでいるところに行くのが苦手なので、
連休中は家に居ます。

仕事のメールも来ないこういう時に
じっくり普段は出来ない事をする
のはどうでしょう。

休暇だからと旅行や買い物で終わってしまうと
又あたふたと仕事に戻ることになります。

一日くらい、ネットを完全オフにして、
缶ではなく、
コーヒーをゆっくり煎れ、
空でも眺めてみましょう。

時計替わりにテレビをつけるのも我慢ガマン。
最初は淋しいかもしれませんが、
半日もすると、外の鳥の声や
風の音が聞こえて来るようになるでしょう。

季節は気がつかない間に移り、
もう新緑が青々とした影を落とし、
花の色も濃くなっています。

もし、連休中に読む本をお探しなら、
まだ「文学」という言葉が人々を深く動かしていた
昭和の代表的な物語作家、
辻邦生の本はいかがでしょうか。
理知的な耽溺を味わうことができるかもしれません。

辻邦生は学習院大学で教鞭をとりながら、
膨大な量の作品を残しました。
その作品の多くは
日本やヨーロッパを舞台にした、
叙情溢れる大ロマン小説です。

特にお薦めなのが、文庫で3巻あり、
まとまった休みに読むにふさわしい長さの
「背教者ユリアヌス」。

題名は生硬ですが、正真正銘のロマン大河小説で、
深い深い愛の物語です。

一度読みはじめたら、寝るのも惜しくなるほど
その物語の世界にぐいぐいと引き込まれて行きます。
「物語を書き続けなければ」と言っていた
作家の面目躍如で、まさに金字塔の作品です。
そしてその筆致は的確でありながら豊穣です。

例えば、
愛する人を思ってユリアヌスが花の庭を散策するシーンなど、
まるで、読者がその隣でユリアヌスの息づかいを
聞いているかのような錯覚を起こさせるほどで、
読んでいると胸がドキドキしてきたものです。

辻邦生は、フランス留学の経験があり、
パリのアパルトマンを借りて日本と行き来していた時期もあるようです。
パリで客死した思索家の森有正とも親交があって、
ヨーロッパの歴史に造詣の深い知識人であると同時に
品のあるインテリ風のハンサムな人でしたが、
その日記などを読むと、「書く事」へのほとばしる情熱で
まるでアスリートが筋力トレーニングをやるように
毎日毎日原稿用紙に向かっていたようです。

奥さんで美術史家の辻佐保子氏は
「いつも書いている人だった」
と語っています。

20130426

平成に入って今年で25年。
四半世紀が過ぎようとしています。
辻邦生自身は平成11年に他界しますが、
昭和44年から47年まで、
昭和のど真ん中に発表された小説で、
昭和48年に毎日芸術賞を受賞した作品です。

そのスケールの大きな壮大な物語は
是非、平成生まれの人に読んでもらいたい一冊です。

物語が真の力を失いかけているような今、
ほんとうに「泣ける小説」とはどういうものなのかが
味わって頂けると思います。

深い感動と溢れる物語をあなたへ。

では、素敵な連休を。
私は連休中もボチボチ更新して行きます。


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最優先にすべきこと

テレビは見ないのですが、
相も変わらず「24時間テレビ」が放送されたようですね。
今進行中のふくいちでの汚染をキチンと報じないでも
やるべき放送なのでしょうか。

私達の社会は集団で行け行けドンドンの目標がある時には
とてつもない力を発揮するけど、
物事の後処理やら、
上手く行かない事態から撤退することや
途中で中止が決められない体質であることは、
先の大戦とか、バブル崩壊後の失われた20年とか、
残念ながら、歴史が証明しています。

怖いのは、崖っぷちまで行っても引き返すことより、
崖に落ちることを奨励するかのような時です。
先の大戦でも、神風特攻隊のような悲しい死がありました。

海が世界と繋がっている以上、ふくいちの汚染水問題は、
日本だけの問題ではないのは、誰が見ても明らかです。
もう東電はお手上げ状態みたいに見えるし、
国家プロジェクトを立ち上げ、
首相が世界にアナウンスして、
世界に助けを求めるべきことのように思えます。

海にながして薄めれば問題無い、
みたいなことを言う学者もいるみたいですが、
仮に、今までの分はそうであっても、
東電だけに任せておいたら、
確実に、燃料を取り出せるまで営々と
汚染水は海に流れることになって行きかねません。

もちろん、この汚染を公式に認め世界にSOSを出せば、
経済に良い影響はないでしょうし、
オリンピックなどもやっている場合じゃなくなるでしょう。

だから、国民も政治家も官僚も東電も、
事態を小さく見せてやり過ごしたいと思っているのかもしれません。

でも、やり過ごせることでしょうか。
燃料が地下水に触れているかもしれないのです。
ない事にしたくて、このまま積極的に対策をとらないと、
近づくことさえままならなくなるかもしれないのです。

つい最近だって、水たまりの空間線量で100mSv/hあったのです。
仮にこの場所で一日7時間十日間働くとほぼ半数の人が死ぬ線量です。

もう、誤摩化したり騙し騙し出来る状態ではないのではないでしょうか。

しかし、311以降に思い知らされたことがあります。
普通の人々の「今の生活を手放したくない」
という強固な意識の積み重ねが意外に大きく響く、
ということです。

原発事故後にローンを組んでマンションや家を
買った人も少なからずいます。
そういう人達は、「原発事故はたいしたことなかった情報」
を鵜呑みにしたのかもしれませんが、
どんな事があっても経済は落ち込んでもらいたくないはずです。

しかし、そういう人達に「騙された責任」はあるでしょうが、
先延ばしや安全情報で事実を隠蔽して来たことのツケが
今束になって押し寄せている感じで、
もし最初から本当のことを開示していれば
家を買う事はなかったかもかもしれません。

いつまでも負けを認めずに、沖縄の地上戦や
2発の原爆投下まで白旗を揚げずに
被害を拡大した社会の体質そのまんまです。

まだ誤摩化すのでしょうか。
改憲なんて言ってる場合じゃないと思うのですよね。

今日は311以降、読んだ原発関連の本をあげておきます。
311以降と今では状況のホットさはもちろん違うのですが、
結局、今も、事態は良くなっていないし、
もしかすると、想像もできない事態すら起きる可能性は
否定出来ないのです。
経済の落ち込みを考慮しても、私は、国を挙げて
この問題に取り組むべきだと思うのですが……。

参考になれば良いのですが。

まず推進派。
ブログ「金融日誌」の藤沢数希さんの本。
推進派の理論のほとんどが網羅されていると思います。
経済第一、と思う人は納得の内容。
人の命も経済がなければ助けられない、
というのはよく聞く論理で、この本でも言及しています。

ニュートラル本。推進派に読んでもらいたい。
題名よりずっとニュートラルな内容です。
反対派と推進派の話し合う公共の場が必要と説いています。
作者本人の考えというより、様々な立場の人に意見を聞く、
という内容で、特に哲学者の内山節さんの意見は、
推進派にもキチンと考えてもらいたい内容を含んでいます。

ご存知小出裕章本。
原発反対派の代表の本。

マダムかよこが一押しです。
分子生物学者の書いた本で、私はとてもしっくりきました。
著者自身が、科学者でありながら、
原因不明の病気に悩まされたことも関係するかもしれませんが、
科学も分からない事がある、というスタンスです。

原発報道についての本。
著者二人ともジャーナリストとしてはアクが強いですが、
海外の事情が分かりやすく書かれていて、読む価値ありだと思います。

放射能対策具体本。
放射能対策の家の目張りの仕方、など、
役に立つ情報満載。
私は、ふくいち事故後すぐ読みました。
地震国なので、目を通しておいて損はないです。

ふくいちの事故後、様々な人のメッセージを集めて出版されたもの。
作家の池澤夏樹氏、城南信用金庫の吉原毅氏、
大地を守る会の藤田和芳氏、元宇宙飛行士の秋山豊寛氏、
また、原発は安くないと計算する立命館大学の大島堅一氏
などが寄稿しています。

絵画をめぐる心理劇

今日は
トレイシー・シュヴァリエ(Tracy Chevalier )著
“Girl With a Pearl Earring” (邦題:『真珠の耳飾りの少女』)
をご紹介します。

以前ちょっとご紹介しましたが
読了しましたので、書評を。

いうまでもなく、フェルメールの代表作
『真珠の耳飾りの少女』(オランダマウリッツハウス美術館所蔵)
を題材にしたフィクションです。
映画ではスカーレット・ヨハンセンが主人公を演じているようで、
そんなところから何となく「恋愛物」だと思って読み始めたのですが、
むしろ絵画をめぐる一風変わった心理劇、という趣きです。

主人公は父親のアクシデントから、フェルメールの家に
奉公に出ることになったGriet。
わずか16歳の少女なのだけれど、
自分の不利な状況を、その度ごとに見極めて
ひとつひとつ乗り越えて行く賢い少女。
この少女をめぐる周囲との静かな心理劇。

面白いのは、人間模様の描写だけではなく、
当時の絵画制作における絵の具の作り方の描写なども
出て来るところです。

今私達は、絵の具はチューブに入っているもの、
と思っていますが、もちろんこれは、近代になってからのこと。
顔料も現在は合成ですが、当時は天然のものばかり。
本の中にもフェルメールが好んで使ったラピスラズリを
細かく摺って色を作って行くと、その青のあまりの美しさに
主人公が心を動かされる様子が描かれます。

また、フェルメールはカメラの前身である
カメラオブスキュアを使ったともいわれていて、
主人公がフェルメールと一緒にその不思議な箱を
覗くシーンも出てきます。

つまり、フェルメールのファンなら、ワクワクするような仕掛けが
詰め込まれた小説なのです。

フェルメールの作品が次々と描かれて行く様子も
語られ、フェルメールの画集を側に置いて読んで行くと
楽しみが倍増だと思います。

また、主人公の性格描写などが具体的で、
英語でもイメージしやすく、
しかもそれらと先に述べた様々なディテールと響きあって
少しずつ少しずつ話は針の先を突き刺すような、
緊張感が高まって行きます。

原題の ”Girl With a Pearl Earring” も不思議です。
なぜなら、イヤリングは普通両耳につけるから複数のはず。
この謎も、本を読めば解けます。

カトリックかプロテスタントか、という
私達からすればあまり興味がわかない部分も実は
重要な秘密が途中で明かされたりもします。

文学的にすごく重要、という本ではないですが、
17世紀のオランダの町や人々の様子や風俗と
ちょっと知的な芸術家の生活を鮮やかに再現してくれた一冊です。
そしていつの時代も変わらぬ人間の理不尽な心の描写も見事。

英語も、作者の文体に慣れると、
私でもスラスラ読める難易度です。

少し古いヨーロッパに興味のある方や、
人間の心の彩の英語表現を増やしたい方には
楽しめる一冊ではないでしょうか。

ところで、Grietは「真珠の耳飾りの少女」の
モデルになるのでしょうか。
それは読んでのお楽しみ。

絵の具の話に付け加えると、
今は油絵も水彩絵の具もチューブ入りですが、
実は日本画では、今も絵の具をすり鉢で摺って
膠(にかわ)で溶きます。
日本画を見る機会があったら、是非思い出して下さい。

翻訳は↓ こちらです。

↓ 分かりやすいフェルメール解説本。図版もキレイです。

ひとつとして同じものがない自然

久しぶりに女性像をアップしました。

20130703

実は私の一間の押し入れ一杯のデッサンの
半分が女性ヌードです。
なので、アートとはいえやっぱりネット上に載せるのには
神経を使います。

最近は、野外での生き物たちをスケッチすることが多くなりましたが、
人間は、描いていて面白いですし、
やはり若い女性の美しさは格別なものがあります。
もちろん人類の種の保存がその美しさの最終目的です。
昨日の繰り返しになりますが、
まさに、創造主のイマジネーションは完璧です。

すごいと思うのは、
眉と目と耳が二つ、
鼻と口がひとつ
というように、顔や身体の部位は数が決まっているにもかかわらず、
一人として同じ顔、同じ身体を持った人がいない、
という事です。

昨年の1月のナショジオは双子特集でした。
10組くらいの双子の顔写真がアップで並んでいました。
一卵性双生児は、ひとつの受精卵が二つになるわけですから、
遺伝子的には全く同じなのに、
どれほど似ていても、微妙に違うのが面白いほどでした。

昨日私は無造作に「創造主」と言いましたが、
「創造主」とはなんでしょうか。

間違いなく言えることのひとつは「時間」が絡んでいる、
という事です。

以前、福岡伸一さんのベストセラー生物と無生物のあいだを読んだ時に、
印象的だったのが、この「時間」の概念でした。

ま、この本は、アマゾンのレビューを見れば分かるように
賛否両論が有るのですが、
私は分子生物学の歴史の人間模様は面白かったし、
(これがめちゃめちゃ人間臭い)
最後の福岡さんの実験の話しも面白かったです。

その実験とは福岡さんたちはある遺伝子を抜いて実験をするのですが、
途中から抜くと、本来生まれる部位が生まれないのに、
最初から抜くと有るものと変わらない結果が出たというのです。

普通だったら逆のような感じがするけど、
福岡さんたちが何度実験しても同じ結果になるのです。
そして福岡さんがたどり着く結論が「時間」なのです。
いわゆる「動的均衡」の実証実験だったそうですが、
生物には不可逆な時間があって、その流れに沿って折りたたまれ、
一度おりたたんだら二度と解くことのできないし、
全体としての存在だ、というものです。
この実験で言うと、最初から無いものは、
無いものとして全体の中で補いあう、というのです。
そしてそれが出来るのは時間があるから。

多分理系の人には自明の理でしょうが、
私には新鮮でとても面白い一冊でした。

次回の更新は土曜日を予定しています。

省エネを考える。そしてフンデルトヴァッサー

さて今、必要があって、2030年の都市生活ってどんなだろう、
を考えています。

今日、外出したら、電車もバスも冷房をかけていました。
二年前は節電節電で大騒ぎでしたが、
自民党は原発再稼動を参議院選の公約に上げており、
人々も慣れちゃって、
以前と変わらぬ生活に戻ろうとしています。
省エネとか節電って、結局続かないんですよね。

私の個人的な考えとしては、
エネルギーや食料など生命にかかわるものは
ある一定の地域内で、一定量は賄うことが
最も人間らしい生活になるだろうと
思っています。

それから、個人の節電や省エネは努力義務なので
むしろシステムそのものを変えてしまうことが
最も早道だとも思っています。

といっても、むしろ世の中の動きは逆で、
TPPとかグローバリゼーションで、
安いものを世界から買う、という方向にシフトしかねません。

だから、私が自分の考えを人に話すと、
鎖国するのか、と言われますが、
別に鎖国しなくても小さなコミュニティで賄える分だけ賄い、
足りない分は他のコミュニティや外国から取り入れれば良いだけの話しです。

例えば東京は、食料自給率もゼロだし、エネルギーも水すら自分で賄っていません。
ところが、そこにいる人たちが国家のシステムの多くを
つかさどっているわけですから、
様々に狂いが出てくるというものです。

単純に言ってしまえば、
もっと田舎や地方に様々な権限やお金を回せば、
もともと食料や水や技術はあるのですから、もっと簡単に省エネ国家になるのに、
と思うのです。
これが私の言う「システムを変える」の意味です。

原発というシステムそのものが、中央集権の象徴みたいなものですから、
地方への権限委譲が進むことは、このシステムの解体にも繋がるだけに、
なかなかその方向には行かないでしょうが。

そして、ある程度のエネルギーと食料を各地各地で賄えば
火力で使う石油や天然ガスは、今よりは少なくなるはずです。

一方で、マジで省エネ対策をしなければならなのは都会です。
私が小さかった頃は、一夏に29度になることが1、2回くらいで
大騒ぎでした。
しかし今は、外のアスファルトの熱気と室外機の排気の熱風で
都会の空気は二重三重の熱のこもり方だと思います。

地球温暖化懐疑論というのがあって、
地球温暖化は原発推進派のでっち上げだ、
という人もいるのですが、
気候が極端になっているのは間違いの無いことだと
私は肌で感じます。

さて、都会の省エネでよく取り上げられる「屋上緑化」。
これは確かにビルの室内の温度を下げたり、相当な効果があるようです。

「屋上緑化」で思い出すのが
オーストリアの芸術家、画家、建築家である、フンデルトヴァッサー。
自然を愛した彼の作風は、「自然には直線はない」として、直線を使いません。
ウィーンにある彼の美術館が「フンデルトヴァッサーハウス」
5年ほど前、ウィーンにいった時に実際に訪ねてみました。
少し歪んだ床や柱は可愛いタイルで覆われ建物のあちこちから植物が顔を出していました。

また、
晩年に作った温泉村は地面から家が生えているみたいです。
ブルマウ温泉村
これらのミニチュアの模型があってそれがほんとうによく出来ているのです。

彼が多くの作品を日本で残しているのは、
放っておけば木々が大きくなる日本に彼が愛着を覚えたからでしょうか。
そういえば日本と自然が似ているニュージーランドで晩年は過ごしたようです。

日本での作例に、TBSの「21世紀カウントダウン時計」(東京都赤坂、1992年)、キッズプラザ大阪の「こどもの街」(大阪市北区、1997年)や、大阪市環境局舞洲工場(大阪市此花区、ゴミ処理場、2001年)、大阪市舞洲スラッジセンター(大阪市此花区、下水汚泥処理施設、2004年)があります。

絵は原色でコントラストの激しい曲線を多用した
独特のアクのある絵ですね。
表現で人前で裸になるようなところもあったようで、
やはり現代の奇才の一人でしょう。
建物のように他者の手を介する部分がある方が、
面白みが出るようです。

一角獣と貴婦人/ お薦め・展覧会もやってます。

今、トレイシー・シュバリエ(Tracy Chevalier)の
“Girl With A Pearl Earring”(真珠の耳飾りの少女)
というペーパーバックを制作の合間に読んでいます。

フェルメールのあまりにも有名な「青いターバンの少女」
を題材にした小説です。

トレイシー・シュバリエはヨーロッパの芸術作品をヒントに
物語を紡ぐことをひとつの売りとしているようで、
以前たまたま本屋さんでこの作家の
“The Lady and the Unicorn”(邦題「一角獣と貴婦人』)
を見つけて読んだ事があります。

これはパリのクリュニー美術館(中世美術館)にある
有名なタペストリー作品を題材にとっています。

実はこのペーパーバックを見つけたとき、
その一ヶ月前くらいにパリへ行ったばかりで、
やっぱりたまたま「中世美術館」が泊まった宿の近くにあることを知って出かけて行き、
ほんとにたまたま、この「一角獣と貴婦人」というタペストリーを
見たばかりだったのです。

タペストリーはヨーロッパでは貴族が壁に飾るもので、
手間ひまかけて機で織られ、複雑な模様のものになると
完成までに3年くらい掛かったものもあるようです。
このクリュニー美術館(中世美術館)のものは
6枚セットで、
「味覚」、「聴覚」、「視覚」、「嗅覚」、「触覚」、そして「我が唯一つの望み」(A mon seul désir)をテーマに作られています。

例えば「味覚」は、オレンジ(らしい)などの実のなる木に囲まれた貴婦人が
侍女の差し出すお皿から果物を摘んでいるその下で、
お猿さんが何やら食べています。

「聴覚」をテーマにしたものは、
ハープに鍵盤がついたような楽器を貴婦人が演奏していて、
侍女がふいごのようなもので空気を送り込んでいる様子も見えます。
一角獣(ユニコーン)は聞き惚れたように、横たわっています。
どの場面も、貴婦人の足元は細かい草花で覆われています。

さて、なんとこの、6枚セットの「貴婦人と一角獣(きふじんといっかくじゅう、フランス語 : La Dame à la licorne」が今、日本に来ているではないですか!

フランス国立クリュニー中世美術館所蔵
貴婦人と一角獣展
The Lady and the Unicorn from the Musée de Cluny, Paris, France

先日ご紹介した「日本におけるイタリア2013」でラファエロやミケランジェロが来てしまうし、
この展覧会も「フランスの至宝、奇跡の初来日」となうってます。
日本がまだまだ経済大国であることを物語っていますね。

織物で染料なので、多分かなり光量は落してると思いますが、
見て損はないと思います。

クリュニー美術館(中世美術館)は今にも崩れそうな小さな小さな美術館なのですが、
その古色蒼然としたところが私のお気に入りでした。
私のホームページからもリンクしてあります。

真珠の耳飾りの少女 [Blu-ray]は映画では
スカーレット・ヨハンソンが主演ですね。

白水Uブックスから翻訳も出ています。