今日は、大学の恩師で、染色家柚木沙弥郎氏のお話を聞いてきました。
92歳にエネルギーをもらってきました。
若い頃のお話もされましたが、
最も言いたいと思われた部分を書いておきます。
60歳から挑戦して、海外の美術館に自分の作品を所蔵してもらうまでになる話しです。
氏は二十代の終わりから大学教員として後進の指導に当たりながら
創作を続け、学長も務めたあとに定年。
定年後、これまでと同じ仕事をして自分の模倣になるのはイヤだから、
どうしようと思っていた時に
ある作品に出会い、生命力と自己肯定が重要であること、
そしてもっと自分をオープンにすることが大事だと気付かされます。
そこで、自分をオープンにするために
海外に出て個展をやろうと挑戦することにします。
というのも、日本で個展をやると、知り合いばかりに見てもらうことになるので
純粋に知らない人に見てもらいたいと思ったと。
場所はパリ。
パリが好きだから。
そして、パリには、専門家もまた個人でも美術に目を開かれた人たちが少なからずいるから、
ということでした。
パリの画廊を自分で歩いて、自分の作品展を開くように説得します。
しかし、染色、つまり布を芸術として扱ってくれるところは無く、
門前払いを食らいますが、諦めずに、パリに行く度に
ギャラリーを回り説得をし続けます。
その結果ようやく一件ギャラリーが説得に応じてくれ、
開催の運びとなります。
個展も好評を博し、「another of art」と扱ってくれるようになったそうです。
で、普通の人は、パリで個展を一回やると満足しちゃうけど、
柚木氏は3回ギャラリーで個展をやったそうです。
そしてついに、クラフト関係の美術館で展覧会を開くことになります。
それまでに8年かかっていました。
そして美術館の館長はその間、4人替わっていたそうです。
そして、2014年にはフランス国立ギメ東洋美術館に作品が所蔵され、
展示会も開かれました。(既に終了)
実は私の友人が、一回目の個展にパリ見学を兼ねて行っていたので、
当時断片的に話しは聞いていましたが、
そういう事だったのか、と今日の話しを伺って納得。
柚木氏は
「若い人は野心を持つべき」
といいます。
私もそう思う。
今は格段に世界への挑戦へのハードルが低くなっています。
ネットを見ると、世界中にクリエイターが溢れています。
あの中からどうやって取り上げてもらうようにするのか、と思うけど、
ひたすら作り、ひたすら現実に動くしかないでしょう。
ところで、以前このブログで取り上げた河井寛次郎の話しを
柚木氏が今日もされていました。
河井寛次郎が人前で器に筆で模様をサッサと描いて仕上げたのを見た人が
「30秒で出来るのですね」と言ったら、
「60年と30秒です」と答えたというのです。
一生に渡ってのたゆまぬ精進こそが、作品に反映するのだという事です。
悲しいことだけれど、下手すれば、再び戦争に巻き込まれる可能性も
出てきました。
「海外に自分の作品を分散させる」という事も重要になるかもしれません。
あんまり考えたくないですけど、真実から目はそらせません。
いずれにせよ、作品を作り続けましょう。
そして、人間として、戦争に抗いましょう。
あ、言葉の勉強もしておいた方が良いですね。
頑張りましょう。
<参考記事>
一点ものの絵の価格についての試算