カテゴリー別アーカイブ: わかりやすい絵の話

見えるものと 見えないものと

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さて、今日のテーマは……?

昨日の鳥の話でも書いたように、私は基本的に、よほどの事がないと「見たことのないもの」は描かないし、写真をコピーする形で絵を描くことはありません。現場で観察し同時にデッサンしていきます。鳥のように動くものはメモ程度のデッサンになることがほとんどですが、それでも、その場で描いたデッサンには勢いがあり、息づかいが残ります。

では、「見えるもの」しか描かないのか、というと、実は「見えないもの」を描きたいのです。

逆説的ですが、「見えないものを描く」ためには、「見えるもの」はいい加減に描いてはいけないと思っています。

ただ、「見えないもの」を描くために、今後も「見えているもの」だけを描き続けていくかどうかは分かりません。

禅問答のようですね。

市場経済の中では「結論を先延ばしする」事は競争に負ける事を意味するので、こういう禅問答のような事が排除されていきます。
でも、人の人生なんて、結論のでない事ばかりです。
何かを考え続ける事は、すぐにお金になる訳ではないのであまり重視されませんが、でも結論がなかなか出ない「何かを考え続けていく事」は、確実に強靭でかつしなやかな心を作ってくれるはずです。

ところで、音楽は絶対的に基礎が必要です。下手なピアノやバイオリン、まして歌など聞かされても拷問にしかなりません。ダンスや芝居も下手なものは魅力を感じません。ところが同じ芸術でも絵は違います。子どもの下手な絵に心を動かされたりするのです。
何故なのでしょう。

実はこれもず〜っと私が考えている事です。

narccis

今日は水仙の素描です。
ちなみに切り花ではなく庭の水仙を描いたもの。地面から生えているものの凛とした感じが出ていればいいのですが。

水仙は英語でナルシスといい、ナルシストの語源になったギリシャ神話のナルキッソスの話はあまりに有名で、これを題材にした絵もたくさん描かれています。
これはカラヴァッジオの「ナルキッソス」(1598-99)。

ところが、私には同じカラヴァッジオのこちらの作品の方が、自己愛に溺れているナルシストを表現しているように見えます。
「ナルキッソス」は水を飲もうとしているだけに見えたり…。(笑)

まさに「見えるものと見えないもの」の例なのかもしれません。

・・・なんちゃって、実は私がひねくれているだけかもね。

明日はお休みの予定です。

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では。

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本の紹介 里山とか哲学とか

このブログの目的の2番目に、
②読んだ本や見た映画を紹介し、本やパンフレットの現物は片付けるため。
としました。

昔の方が現在より遥かに読書量は多いので、昔読んだ本を紹介する事が多くなるかもしれません。

ですが、やはり最初に紹介するのは、私が昨年の夏に表紙の絵を描いたこの本ですね。(笑)

著者は西洋中世哲学が専門の八木雄二さん。ドゥンス・スコトゥス(1266?〜1308)という舌を噛みそうな名前の哲学者の研究をされているのですが、里山復元の活動を長く続けておられ、鳥にも詳しく200種類の鳥が分かるそうです。

本の内容は、「ボランティアによる里山ナショナルトラスト運動」とも呼べるユニークな概念です。
「里山」は日本が世界に誇れる持続可能なシステムです。この古くて新しい概念「里山」は、例えば宮崎駿さんの作品を見ても色濃く反映されていると思います。

表紙の原画はこちらから見て下さいね。

それから、宮崎駿さんが「もののけ姫」の構想を練る時、屋久島の森のロケハンで実際にスケッチした場所がこちらから見て頂けますので是非見て下さい。この森の話は、また別の機会に。

あ、さすがにこの本は処分しません。(爆)

ところで、八木さんはご専門の中世哲学では「天使はなぜ堕落するのか」という、西洋中世哲学入門ともいうべき妙に色っぽい題名のご本も書かれていて、これがかなり知的に刺激的な一冊なのです。

私たちは中世というと暗黒とか魔女刈りのイメージがあります。一番分かりやすいイメージは1986年に製作された映画「薔薇の名前」やフランスの世界遺産「モンサンミッシェル」かも。

ところがどうやら、その中世を理解する事は現代を理解する事でかなり重要だ、という事をこの本は私に教えてくれました。そしてヨーロッパでも中世の研究者は多くはなかったのだけれど、いま、理解を深めるべきだという事で研究者が増えているそうです。

振り返ってみれば、私たち日本人の現代生活ですら西洋的キリスト教的価値の中から生まれたものに囲まれています。だけど私たちはその価値の中核の精神には「宗教なんて」と、ほとんど興味を持たずに上澄みだけをすくって利用しているように思えます。

八木さんがすごいのは、このご専門の西洋哲学とボランティアで続けてこられた日本が誇る里山復元活動での経験を生かして独自の哲学「生態系存在論」を打ち立てたところです。

これは3部作で大部ですし、奥が深〜いので、「天使はなぜ堕落するのか」もそうですが、別の機会にご紹介することになるでしょうが、「人間はなぜ生まれたのか」という命題にかなり興味深い論を展開していて、多くの方に手に取って欲しい本です。

写真は第2部ですが、3部作全部は無理だという方には、第3部生態系倫理学の構築―生きることの「あるべき」かたち
だけでもお勧めします。
私は「目から鱗」でした。

では、今日はこのへんで。

あ、明日はお休みの予定です。

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