一つ前の記事で、西洋美術館の基礎が松方コレクションにあったことは書きました。
今回は、現代の作家さんたちを支えるコレクターさんのお話しです。
実は、私の古い知人に現代美術のコレクターさんがいるのです。
仮にTさんとお呼びしましょう。
現代美術のコレクターさんでは、
会田誠さんの作品などを集めておられる
精神科医の高橋龍太郎さんという有名な方がいますが、
普通のお仕事をされながら美術作品のコレクターさん
である方は少なくないのです。
少し桁が大きくなると、
先日ノーベル賞を取られた大村智さんは
特許で築いた財を女性画家の作品の収集に使われて、
山梨に美術館を建てられています。
歴史的にみても、
地方の篤志家や財閥が集めたコレクションなどが
美術館となっている例が少なくありません。
古くは倉敷の大原美術館、
最近は箱根のポーラ美術館、
千葉のホキ美術館などが人気です。
反面、国立の美術館や博物館の自国の歴史的作品の収蔵規模が
ヨーロッパやアメリカなどとは比べ物にならないくらい貧弱なのは
気になるところです。
岡倉天心が日本ではなく、
ボストン美術館の東洋美術室長として活躍したことは
少しアイロニカルなエピソードです。
ただ、その辺りの国の文化政策の話は別の機会にして、
今回は現代美術のコレクターさん、ってどんな人?というお話です。
実際はメールのやりとりだったのですが、インタビュー形式で原稿を起こしてみます。
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マダム:今回、「ペインティングの現在-四人の平面作品から-」に貸し出された作家さんをご紹介ください。
Tさん:高橋大輔君というアーティストです。2007年位から、追って観ています。貸出作品5点の内3点が出品されています。ポスターに使われている作品、一番小さい作品そして副題「てっさい」 の3点です。コレクターとして、美術館に貸出す事、嬉しく思っています。同じく出品作家さんの浅見さんは2001、2年位から(銀座・藍画廊から)観ています。
マダム:現代アートって、一部の人には人気があるけれど、やはり、わかりにくかったりして、なかなか見るきっかけがありませんよね?最初のきっかけはなんだったのですか?
Tさん:「現代アートを積極的に観歩く きっかけ」は、40代前半に仕事の過労から、入院して。その時、退院できたら、仕事以外に何か好きな事を始めよう!(ワーク・ライフ・バランスとして)と思い、昔から「アート」が好きだったので、「アート」を観歩こう。だったら「現代アート」を観歩こう。と考えたのが、きっかけです。以来、今年(2015年)で16~17年に成ります。
マダム:観歩くと言っても、お金も時間もかかりますよね?
Tさん:確かに美術館は入場料を取られるけど、画廊はタダ!(笑)。街歩きや散歩が好きな方は、地下鉄の1日券(&スニーカー)さえあれば、東京中の画廊を観歩けます。若い方なら、「アート散歩」。昔・若かった方なら、「アートお遍路(笑!!)」と称し、プチ旅・感覚で観歩くと、知らず知らずに現代アートを楽しめると思います。
マダム:「画廊はただ!」なるほど!それは穴場の視点ですね。(笑)
では、実際,観歩く時、何に心がけたら楽しめますか?
Tさん:現代アートに、親しみ興味をもち楽しむ方法ですか。なかなか難しいですね(笑)。というのも、音楽や映画などの受け身・型の楽しみ方と違い。現代アートの場合は、今まで生きて来た中の「経験&知識&遊び心(好奇心)」をフルに使い、アート作品に体当たり(能動的に)をしないと楽しめないからだと思っています。特に、遊び心(好奇心と柔らか頭)が必要に思います。具体的には、アートを 「いっぱい、観る事。」だと思います。
マダム:いっぱい観る、ですか。数をこなすというのはどの世界でも重要ですよね。数をこなしつつ、さらに面白く観る方法が何かあれば。
Tさん:画廊や美術館で「現代アートを観る時」 まず、好き嫌いの感情をもたず、「どういう人が?、どうやって?、何の為?」に作品を作ったのか?を想像すると面白くなると思います。。例えば、デュシャンと云う作家さんが、無審査の公募展に、工業製品(男性用の便器)を台座に載せて出品しました。絵を描く時や写真を撮る時、モチーフや被写体を「選びます」。この「選ぶ」と云う行為と デュシャンさんが工業製品(便器)を「作品」に選ぶことは、大した違いが無いと思いました。たぶん、この時、デュシャンさんは、アートの根本は、「選ぶこと。」と思った(考えた)。のかも知れません(笑!!)。
マダム:デュシャンの話は現代美術の入り口なので、初心者の方は後で紹介する本を読むと良いかもしれませんね。ところで、現代美術というと世界的にはどのような流れになっているのでしょうか?
Tさん:「世界の現代アートと日本の現代アート」は、かなり違いがあります。 世界の現代アートは、アート作品に、 歴史的&文化的な文脈(流れ)とその作家が育った国(環境)そして作家・個人のアイデンティティが作品に込められいるか?が重要なポイント(評価の)となります。一方、日本の現代アートの場合は、文脈やアイデンティティについての評価が、曖昧です。その為、面白い表現や面白いコンセプトの作品が、注目を受けます。あまり日本の「評価」を気にせずに、自由に「自分の評価」で作品を楽しんで良いと思います。
マダム:さて、作品が楽しめるようになると、やはり自分でも購入したいと思うようになるでしょうが、どのような基準で購入されますか?
Tさん:基準は「自分の勘」です。(笑)それから、保存出来る大きさであるか、も大きなポイントです。
マダム:そういえば、今回の展覧会で、高橋さんの作品が一番個人蔵が多かったのですが、大きさが手頃であったことが関係しているかもしれませんね。ところで、差し出がましい質問ですけど、購入費はどうされていますか?
Tさん:私はお酒は晩酌程度ですし、タバコもやらないので、なんとか捻出出来ます。(笑)
マダム:なるほど。ところで、先ほどから「アート」という言葉を疑問をもたずに私たちは使っていますが、「アート」を定義するとしたらどうなりますか?
Tさん:アートとは?少し難しい質問ですね。精神科医で現代美術コレクターの高橋龍太郎さんは、「アートとは常識に縛られないことをうながすメッセージです。」と言っています。僕もそう思います。僕にとってアートは「宗教+哲学+経済学」だと思っています。
マダム:「アート」は美術や芸術という言葉とどう違うのでしょうか?
Tさん:美術と芸術とアートの 違い?これも少し難しいですね。「芸術」はほぼイコール「アート」かなぁ。「美術」は芸術の、一部分かなぁ。ぐらいです。「芸術」は重い言い方で、「アート」は軽く、親しみやすい感じで「アート」と言う言葉を使うように感じています。
マダム:現代美術を見て楽しみ、買って楽しむ。コレクターのTさんにお話を伺いました。ありがとうございました。
<参考文献>
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