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世界の中心で輝きたいなら、大丸心斎橋の保存くらいしなければ恥ずかしい

日本がまさに世界の中心で輝く

とか、年頭に首相が言ったようですが、
ほとんど20世紀の遺物のような言葉だし、
心斎橋の大丸くらい保存できないような国は世界の中心に輝くなんてこと
永遠にないですよ。

オリンピックに1兆8千億円もかけるなら、
大丸のビルくらい買えるでしょ。

大丸という一企業に、耐震設備を整えて
あのビルを維持しながら経営を続けるのは難しいでしょうけど、
国ならオスプレイ一機節約するだけで
移築ぐらいできるのでは?

そのくらいの価値はあるし、
むしろ「文化」こそがこれからは
一番の付加価値になるはず。

大丸も出来るだけの事はするようです。
外壁を保存したり,一階部分は残せるものは残して使うようです。

大丸心斎橋店本館の建て替えに向け着々!外装・内装ともに保存へ

しかし,もったいない。
全体として細部にわたって目配りをされた建築を
部分としてしか残せない事は本当に悔やまれます。

文化では食べられない、
という人は、銀座や世界中の
メインストリートにあるブランドのビルを思い出して下さい。
まさに、歴史的文化と資本主義が上手く結びついたのが
ブランド商品です。
しかも,その多くがうまく手仕事を残し活かしている。

なんと最近は,エルメスのバーキンは純金より投資価値がある、
とまでいわれています。

株や純金より…一番優良な投資先は「エルメスのバーキン」と判明?

資本主義的には、欲しい人の数より商品が少なければ
価値はドンドン上がります。

しかし,この国では、
一度作ると減価償却を待つだけの
コンクリート製品にはお金を出すけれど、
年月とともに価値を生む「文化」には見向きもしない。

今は,こういうプロジェクトにお金を注ぎ込んでいる。
震災5年目の今【写真特集⑤】(上)海と陸を隔てる巨大防潮堤 東北の被災地で進む建設

この防波堤は愚かとしか言いようがありません。

狭い国なのに日本は土建国家として、
国土のあちこちを切り刻み、
原発を林立させ、
防波堤で海すら見えなくする。

何故こうなるか。
新しいものを作りだしたり考えなくて済むからですね。

防波堤ではなく植林によるやり方だってあったはずですし、
今は、研究も技術も進んでいて,数年あれば立派な森にすることができるのです。
しかし、コンクリートで埋めれば手っ取り早くお金に出来る。
そのデメリットとツケは全部子孫に回して。

先にも書いたように、
資本主義的にいえば、作られるものが消費者より少なければ価値が高まります。

明治になって世界から来た人は
日本の奇跡のような手仕事に驚き目を見張ったと言います。
何故そういう価値のあるものを捨てて来たのか。

日本は明治で工業国家を選んだわけですが、
他の先進国が同時に文化は捨てなかったのに
日本は積極的に捨てて来た。

クールジャパンではアニメを日本の文化とか言っていますけど、
宮崎駿さんのアニメが海外で評価が高いのは
そこに日本独特の自然と文化が描かれているからです。
ディズニーと同じなら,ディズニーで良い。

日本ブランドに対して勘違いしている人が多いような気がします。

これは今に始まった事ではないですね。
今では,多くの浮世絵などが日本の外で所蔵されていますが、
その価値がよく分からずに手放したものも少なくありません。

もっとも、地震や災害の多い,小さなこの国の中に収蔵しておくより
リスクヘッジになるので,今としては良かったのかもしれませんが。

ツイッターでたくさん大丸心斎橋店の写真が流れていたので、
載せますね。

こうやって見ると、
本当に素晴らしい建築で、日本のみならず
人類の宝と言っても良いですね。

クールジャパンをチェック(2)

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引き続き、クールジャパンを密かにチェックしています。(笑)
過去記事クールジャパンをチェック

先週23日の日経の夕刊「エコノ探偵団」という欄に「クールジャパン 稼げるの?」という記事がありました。
ウェブではこちら(今日26日アップ)から読めます。

実は経産省は平成22年からこのクールジャパンに取り組んでいて、こちらにクール・ジャパン 官民有識者会議の記録があります。

特に震災直後の第6回会議では以下のようなことが記録として残っています。

座長は福原義春氏。株)資生堂の名誉会長で美術品のコレクターとしても有名ですよね。

価値観、精神性の形式知化

◎日本人の価値観、精神性が根底にあるが、顕在化できていない。この価値観、精神性を顕在化させ、日本のマザー・プログラム(新たな文化産業をブランディングする母体となるべき、日本文化の基本的考え方)を構築する必要がある。
◎本来はもっと前に取り組むべきことであったが、今回の大災害をきっかけにして、根本から構築せねばならない。それが、ものを創るときの拠り所になる。
◎マザー・プログラムには、グローバルルールとともに、日本の風土などが織り込まれたドメスティックルールを複合的に取り込む必要がある。
◎食分野は様々な分野を内包しており、かつ、空間、暮らし、コンテンツ、ライフスタイルなど様々な領域と関係がある。マザー・プログラムやそのインフラは、そうした各領域に横串を通す存在であるべき。
◎これまで日本は、自身の価値観、精神性を制度化、カリキュラム化することに失敗してきた。フランスは自身の文化を制度化、カリキュラム化してきた。この差が対外的な訴求力の差につながっている。日本にも抽象的であるが心が入るマザー・プログラムがあれば、世界の人々にもメッセージを届けられる。
◎資生堂がHERMESと仕事をした際に、フランスで1カ月のトレーニングを受け、フランスやHERMESのDNAを移転された。日本でも文化を仕込む教育機関が必要ではないか。
◎マザー・プログラムを意識しながら、産業・企業横断で事業を展開していくような仕組みが必要で、そこでの取組みを実験の場として、修正していくことがマザー・プログラムの明確化につながるのではないか。

………

特に、

◎資生堂がHERMESと仕事をした際に、フランスで1カ月のトレーニングを受け、フランスやHERMESのDNAを移転された。日本でも文化を仕込む教育機関が必要ではないか。

この部分はまさに私が、
前回のクールジャパンをチェックで指摘している部分です。

マザープログラムって、つまり「日本文化とは何か」と定義することだと思うのだけれど、私だったらやっぱり「持続可能性を秘めた古くて新しい価値観」と定義するけどね。

さて、こちらは担当の経産省のクリエイティブ産業課のサイト。

で、今回500億のお金がつくというこちらは内閣官房のクールジャパン推進会議のサイト。

18ページの議事録があります。

思いのほか、秋元康なども分かりやすい具体的な話しをしています。ただ、民主党のときの官民有識者会議での議論はなんだったんだろう、民主党の政策は一ミリたりとも引き継ぎたくないのかもしれないけど、内容は大きく違うわけではないのですよね。

全ての官民有識者会議の議事録を読んでいるわけではないのだけれど、むしろ最後の13回の議事録など、具体性も高く、民間ががんばっている様子、それから民間が官に望む内容もはっきりしていて、いい議論だと思うのだけれど、選挙で、ガラガラポンになっちゃったみたいなのが残念。

ま、今回の目玉は500億円がつくという点でしょうか。

今後の予算配分に注目、と思っていたら、25日昨日の日経夕刊に,アニメを放送各社が海外に積極的に売り出すと言う記事が。
ウェブの記事はこんな感じ。
インドで「ハットリくん」…民放、アニメ海外販売に力

ウェブ版タイトルにはありませんが、これは総務省の肝いり。早速500億をめぐる各省庁の攻防が始まったのでしょうか。官民有識者会議にも出ていた話しかも。

ただいずれにせよ、制作は人件費の安いインドなどに発注され、クールジャパンを推進したら、さらに日本の雇用がクールに冷える、という可能性も。

日本の美大は漫画コースやアニメコースを新設しているところもあり、人材は困らないけれど、このままではせっかく美大を出ても就職先は日本にない、という可能性も出てきますね。(昔、東大は出たけれど,という言葉がありましたが……。)

en20130322

さて、このイラストは、英語ブログの記事のために描いたもので、英語記事では、日本画の材料のことや色の話をしています。

私はこの記事の中で、子どもの色を表現する言葉が日本語から英語に移っていることを上げました、やはり、言葉と思考、思考と行動、行動とビジネスは結びついているわけで、日本人としてのアイデンティティを確立していないと、クールジャパンもかけ声倒れになりそうな気がします。

残念なことに、そして、不思議なことに、岡倉天心の時代から、文化の面においては常に保守派は主流派から退けられてきています。西洋を取り入れることが「改革」であり、日本文化を守ろうとすると「守旧派」と見られてきました。

例えば、谷崎潤一郎はその著書陰翳礼讃 で、日本文化を「負けた文化」と捉えています。夏目漱石も母校東大の講演会で似たようなことを話しているんですね。これはどの本にあったのかは記憶は定かではないのですが、あれほどの人たちでも敗北感を味あわざるをえなかった、というのは私にはかなりショックだったので、良く覚えています。

単なるナショナリズムではなく、自国の文化に誇りを持っていくにはどういうことが大切なのか、西洋キリスト教文化では悩まないことに悩まなければいけないなあ、というのが正直なところ。

しかし、先の雇用の面も心配ですし、やはり、平成23年第6回官民有識者会議の記録にあるように、もっと、根本的な国家の戦略として人材育成や価値観の具現化に取り組んで欲しいですね。

クールジャパン、という名の下にお金が儲けられればビジネスとしては万々歳かもしれないけど,それだけでは長期的な利益に繋がらないような気がします。

今日は今までの議事録の紹介だけになりましたが、引き続きこのテーマは取り上げていきます。

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