京都に巡回する春画展、エンボス加工まであってすごい

遅ればせながら、永青文庫の「春画展」を見てきました。

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東京展は明日12月23日で終わりますが、
その後京都に巡回します。

細見美術館
2016年2月6日(土) – 4月10日(日)

描かれた当時は、
春画をもっていると火事にならない、
戦いになった時に怪我しない、
と言った呪術的な意味合いと、
娘さんがお嫁に行く時の教育用という現実的な
意味合いとがあったようです。
キチンとした研究はまだこれからのようですが。

基本的に、展示物の主役モチーフは男女の性器です。
というと身も蓋もないのですが、
むしろそれ以外の見どころが満載。

まず、今回出展されているコレクションの保存状態がとてもいいので、
肉筆は筆使いがよく分かるし、
色がとてもきれい。
極彩色と言っても良いほどに色がふんだんに使われています。

着物の模様は、市松、格子、亀甲、菱、縞(しま)、水玉、唐草など
徹底して描かれています。
背景も、雪をかぶった松、籠に生けられた菊、
屏風の墨絵まで描き込まれていて、
現代絵師もビックリ。

版画に至ってはその超絶技法に唸らされます。
100回くらい刷った極彩版画など手間ひま掛け放題。
しかも、なんと歌川国貞の「金瓶梅」では、
薄墨のきものの裏から模様をエンボス加工してあって
思わず見入ってしまいました。

パソコンでドット線を打つように小紋柄がエンボスされていて、
どうやったのかしら、
木を丸く削って道具をこしらえて打ち込んで行ったのかしら、
などと創造しつつ見ていました。
それにしても芸が細かい。

ここまで手が込んでいると、
価格的にも安くはなかったはずで、
大店の女将さんからの注文、
というのもありえたでしょうね。

猫もよく登場していました。
猫がこたつで寝ていたら、ことが始まり追い出されて
怒っている猫、とか。

人間描写は、なぜか、口は歯や舌まで描いてあるのだけれど、
身体は着物に隠れている部分が多く、表情が引目かぎ鼻なのが、
春画に独特の風味を加えているのでしょう。

また、構図も面白い。
特に鳥居清長の極端に横長の画面にトリミングされた男女の姿。
この清長のシリーズと北斎の「海女と蛸二匹」は、
一度見たら忘れられません。

北斎は、有名な「神奈川沖浪裏」をはじめとして、
そのアイデアがすごいですね。

今回の展覧会。本家の日本で開催されるのは始めて。
大英博物館で開かれて好評だったのに、
開催する美術館が見つからずに主催者は苦労されたようです。
その経緯から、「世界が、先に驚いた」というキャッチフレーズが
生まれたのでしょう。

私が今日見て作品数の多さと春画へかける作家の情熱に驚きましたが、
なんと言っても一番驚いたのは、
その柔らかなフランスパンのバケットみたいな表現でした。
ユーモラスでもありましたね。