「見ること」は自明なのか?見えないものが見える時

またまた少し時間が開いてしまいました。

まず昨日見た展覧会のお話から。

アートトレースギャラリーでの
西山功一 個展 XX(写真展)と同時開催の
西山功一個展連動企画 ー観察・反応・拡張ー
両展覧会。

西山功一氏の写真展は、
ショーウィンドウなどガラスに映り込んだ景色を
実像とともに撮影し、トリミングすることによって
どちらが実像でどちらが映りこみなのかが分からなくなる
という、作品群。

これは、目のパズルみたいで面白い体験です。

実際のビル街などの大きな空間では、
ショーウィンドウに映ったものと実像を間違えることはあり得ないけれど、
写真として「枠」でトリミングすると
建物の中なのか外なのかすら自明ではなくなるのです。

20151019

錯視、とも違う不思議な体験です。
ガラスを撮影することになるので、
全体的に地味な作品が多いのですが、
一度写真の見方が分ると、面白い体験になると思います。

自分の目が信じられなくなるかも。

そして、後者の工藤春香氏の企画は、「画廊で作品を描き加えて行く」
という実験的な試みがされていて、それは
西山氏のコンセプトから展開されたものです。

工藤氏は写真がトリミングで「枠」に取込まれることによって
視線が限定されることに注目。

普段は見えないのに「枠」が現れる時に見えるものがあるとして、
価値観、道徳観、国、などの「枠」へと思考が拡張されつつ
画廊で加筆されています。
まさに「西山功一個展連動企画 ー観察・反応・拡張ー」
なのです。

コンセプトは難しくても、
自由に描き加えられて増殖して行く様は
ライブならではの躍動感。
白い壁や床にアクリル絵具が映えて色もきれいです。

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ところで、
私はご縁があって、アートトレースギャラリーでの展覧会を
ずっと拝見しています。

いわゆる「現代美術」の範躊にはいる作家さんの展覧会がほとんどでしょう。

現代美術は草間彌生氏や会田誠氏でずいぶんとポピュラーになりましたけど
敷居が高い、という人も多いと思います。

極論をいうと、現代美術とは
作者のコンセプトと過程がいっそう重要になるのです。

え、そんな事言われても、という方に
おすすめの2冊をあげておきます。

まず、新書版。
これは実に分りやすく現代アートとは?の疑問に答えてくれる一冊。

上記の本で概要が分かったら、次の一冊。
大学の講義を纏めたものですが、
文章は平易ですし、美学への道も開いてくれるかもしれません。

なお、アートトレースギャラリーは、水曜日と木曜日が休廊ですので、
ご注意ください。