クールジャパンをチェック(2)

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引き続き、クールジャパンを密かにチェックしています。(笑)
過去記事クールジャパンをチェック

先週23日の日経の夕刊「エコノ探偵団」という欄に「クールジャパン 稼げるの?」という記事がありました。
ウェブではこちら(今日26日アップ)から読めます。

実は経産省は平成22年からこのクールジャパンに取り組んでいて、こちらにクール・ジャパン 官民有識者会議の記録があります。

特に震災直後の第6回会議では以下のようなことが記録として残っています。

座長は福原義春氏。株)資生堂の名誉会長で美術品のコレクターとしても有名ですよね。

価値観、精神性の形式知化

◎日本人の価値観、精神性が根底にあるが、顕在化できていない。この価値観、精神性を顕在化させ、日本のマザー・プログラム(新たな文化産業をブランディングする母体となるべき、日本文化の基本的考え方)を構築する必要がある。
◎本来はもっと前に取り組むべきことであったが、今回の大災害をきっかけにして、根本から構築せねばならない。それが、ものを創るときの拠り所になる。
◎マザー・プログラムには、グローバルルールとともに、日本の風土などが織り込まれたドメスティックルールを複合的に取り込む必要がある。
◎食分野は様々な分野を内包しており、かつ、空間、暮らし、コンテンツ、ライフスタイルなど様々な領域と関係がある。マザー・プログラムやそのインフラは、そうした各領域に横串を通す存在であるべき。
◎これまで日本は、自身の価値観、精神性を制度化、カリキュラム化することに失敗してきた。フランスは自身の文化を制度化、カリキュラム化してきた。この差が対外的な訴求力の差につながっている。日本にも抽象的であるが心が入るマザー・プログラムがあれば、世界の人々にもメッセージを届けられる。
◎資生堂がHERMESと仕事をした際に、フランスで1カ月のトレーニングを受け、フランスやHERMESのDNAを移転された。日本でも文化を仕込む教育機関が必要ではないか。
◎マザー・プログラムを意識しながら、産業・企業横断で事業を展開していくような仕組みが必要で、そこでの取組みを実験の場として、修正していくことがマザー・プログラムの明確化につながるのではないか。

………

特に、

◎資生堂がHERMESと仕事をした際に、フランスで1カ月のトレーニングを受け、フランスやHERMESのDNAを移転された。日本でも文化を仕込む教育機関が必要ではないか。

この部分はまさに私が、
前回のクールジャパンをチェックで指摘している部分です。

マザープログラムって、つまり「日本文化とは何か」と定義することだと思うのだけれど、私だったらやっぱり「持続可能性を秘めた古くて新しい価値観」と定義するけどね。

さて、こちらは担当の経産省のクリエイティブ産業課のサイト。

で、今回500億のお金がつくというこちらは内閣官房のクールジャパン推進会議のサイト。

18ページの議事録があります。

思いのほか、秋元康なども分かりやすい具体的な話しをしています。ただ、民主党のときの官民有識者会議での議論はなんだったんだろう、民主党の政策は一ミリたりとも引き継ぎたくないのかもしれないけど、内容は大きく違うわけではないのですよね。

全ての官民有識者会議の議事録を読んでいるわけではないのだけれど、むしろ最後の13回の議事録など、具体性も高く、民間ががんばっている様子、それから民間が官に望む内容もはっきりしていて、いい議論だと思うのだけれど、選挙で、ガラガラポンになっちゃったみたいなのが残念。

ま、今回の目玉は500億円がつくという点でしょうか。

今後の予算配分に注目、と思っていたら、25日昨日の日経夕刊に,アニメを放送各社が海外に積極的に売り出すと言う記事が。
ウェブの記事はこんな感じ。
インドで「ハットリくん」…民放、アニメ海外販売に力

ウェブ版タイトルにはありませんが、これは総務省の肝いり。早速500億をめぐる各省庁の攻防が始まったのでしょうか。官民有識者会議にも出ていた話しかも。

ただいずれにせよ、制作は人件費の安いインドなどに発注され、クールジャパンを推進したら、さらに日本の雇用がクールに冷える、という可能性も。

日本の美大は漫画コースやアニメコースを新設しているところもあり、人材は困らないけれど、このままではせっかく美大を出ても就職先は日本にない、という可能性も出てきますね。(昔、東大は出たけれど,という言葉がありましたが……。)

en20130322

さて、このイラストは、英語ブログの記事のために描いたもので、英語記事では、日本画の材料のことや色の話をしています。

私はこの記事の中で、子どもの色を表現する言葉が日本語から英語に移っていることを上げました、やはり、言葉と思考、思考と行動、行動とビジネスは結びついているわけで、日本人としてのアイデンティティを確立していないと、クールジャパンもかけ声倒れになりそうな気がします。

残念なことに、そして、不思議なことに、岡倉天心の時代から、文化の面においては常に保守派は主流派から退けられてきています。西洋を取り入れることが「改革」であり、日本文化を守ろうとすると「守旧派」と見られてきました。

例えば、谷崎潤一郎はその著書陰翳礼讃 で、日本文化を「負けた文化」と捉えています。夏目漱石も母校東大の講演会で似たようなことを話しているんですね。これはどの本にあったのかは記憶は定かではないのですが、あれほどの人たちでも敗北感を味あわざるをえなかった、というのは私にはかなりショックだったので、良く覚えています。

単なるナショナリズムではなく、自国の文化に誇りを持っていくにはどういうことが大切なのか、西洋キリスト教文化では悩まないことに悩まなければいけないなあ、というのが正直なところ。

しかし、先の雇用の面も心配ですし、やはり、平成23年第6回官民有識者会議の記録にあるように、もっと、根本的な国家の戦略として人材育成や価値観の具現化に取り組んで欲しいですね。

クールジャパン、という名の下にお金が儲けられればビジネスとしては万々歳かもしれないけど,それだけでは長期的な利益に繋がらないような気がします。

今日は今までの議事録の紹介だけになりましたが、引き続きこのテーマは取り上げていきます。

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