カテゴリー別アーカイブ: 生き物観察

モノクロダンディ/オナガガモ

すっかり水が温んできました。
オナガガモのモノクロのイラストを載せておきます。
オシドリをはじめカモ類は鮮やかな色合いの種類が多く
その羽も、光の具合で玉虫色や緑と紫に見えたりします。

その中で、オナガガモは、頭部が焦げ茶に白い筋、
腰のあたりがベージュですが、尾羽に象徴されるように
白い縁取りの黒く長い羽が優雅です。

オナガガモが水辺から姿を消す頃
本格的な春がやってきます。

20150313pintail

↓ハンディで持ち運びに便利。

久しぶりにカワセミを描く

久しぶりに、カワセミを描いてみました。
野鳥公園でも手賀沼でもよく見かけるのですが、
小さくてシャッターチャンスを逃します。

先日室内のフィールドスコープから撮影に成功。
現場でのスケッチと合わせて
メスのカワセミを描いてみました。
下嘴が赤いのがメス。上下共に黒いのがオスです。

20150210kingfisher

「飛ぶ宝石」と言われて、人気があるのも頷ける美しさです。
漢字ではその色から「翡翠」と書くようです。
北斎のシャガとナデシコを配した花鳥画にも「翡翠」の横に「くはせみ」とあります。
こちらのサイトにがあります。

これは、昨年の「ボストン美術館浮世絵名品展」にも出品されていました。
この絵を見ても分るように、ビデオテープもない時代に
北斎は飛ぶ鳥を実に的確に描いています。

多分、死んだ鳥も参考にしたのでしょうが、
羽の枚数などは数えられても、飛んでいる姿は死んだ鳥からは描けません。
抜群の動体視力の持ち主だったのかもしれません。

さて、私はと言えば、山茶花(サザンカ)を配してみました。
山茶花と椿の違いは、花ごとポトリと落ちるのが椿。
ハラハラと花びらを散らすのが山茶花です。

どちらも、花の少ないこの季節に凛とした姿で花をつけます。

梅便りもチラホラ。
春はもうすぐですね。

大寒に トンボの枝先 春を待つ

俳句風の題名ですが、
今日1月20日は二十四節気(にじゅうしせっき)で言うと、一番寒いとされる「大寒」。
二十四節気は陰暦、と勘違いしそうです。しかし、
実は二十四節気は、太陽の運行をを元に一年をわけています。

陰暦は月の満ち欠けの28日を元にしています。
ただ、それだと、季節とのズレが出るので、
地球が太陽を公転する一年を24分割した二十四節気を目安としたようです。
もちろん実際には動いて見える太陽の運行をもとに
決めたのでしょう。
ですから、旧暦を正確に言うと「太陰太陽暦」となります。

一方、いま私たちが使っている新暦は
1582年ローマ法王グレゴリオ三世が導入したので
グレゴリオ暦、と呼ばれています。

すでに知られているように、二十四節気は立春から始まります。
その立春まであと2週間。
その来る春を待つかのようにトンボが擬態して越冬中のところを見ました。

ホソミオツネントンボ

このトンボは「ホソミオツネントンボ」というそうで、
オツネンは越年、つまり成虫で年を越す種類なのですね。
絵だとしっかりトンボだとわかるけど、
実際は長さ3.7〜4センチくらいで、
木の枝の色と同じなので、昆虫に詳しくないと見つけられません。
私ももちろんベテランの観察者に教えてもらいました。
その方曰く、3日前から同じところにいる、のだそうです。

夏にはキレイなブルーになるようで、
図鑑にはブルーの写真が載っていました。

今の時期は枝の茶色に擬態して、とても地味。
しかも、上の絵のように、
4枚の羽根が一ヶ所にキレイに畳まれ
からだの片側に寄せられ、離れたところから見ると
まさに小枝の延長にしか見えません。

人間世界の方は、冬の時代に入ったまま
立春が来ても春の雪解けが来るのか、と思われるような
混乱ぶりです。
すぐ不安定になる。
私は自然の営みに救われる日々です。

↓一年はなぜ365日なの?暦は人間の英知の賜物。国立天文台の暦計算室長の暦のあれこれ。

↓作詞家によるキラキラした言葉とキレイな挿絵。手元においておくと心が和むかも。

いつもの光景が戻ってきました

毎年、年が明けると我が家の庭の金柑が熟れて来て、
ヒヨドリがそれを食べに来ます。

それをガラス越しに猫たちが興奮気味に監視する、
という冬の「いつもの光景」が戻ってきました。

2015013

「いつもの光景」と書くのには訳があります。

実は右側の妹猫が、10月の終わりに急に具合が悪くなり
手術入院をして二週間ほど我が家を不在にしていました。

また家に戻ってきても、エリザベスカラーをしているために
姉猫のマーマレードタビーとの間が
上手く行かなくなったり、
飼い主としてはヤキモキのこの2ヶ月でした。

しかも、11月の終わりには、家人も入院。
これは命に関わらない予定が決まっていたものでしたが、
やはりバタバタと年末年始を迎えることになりました。

このところ、ようやく妹猫も完全復活で、
最近は、二匹並んで朝一番でこの監視体制に入ります。

私も少し安心して、そろそろ人間用の金柑ジャムを作ろうかと
昨日、実を摘んでみたら、500グラムくらいしかありませんでした。
ヒヨドリの食欲は旺盛で、大きな熟れた実はあらかた食べられてしまいました。

ヒヨドリはもともとは山間部に生息していた鳥らしいですが、
雑食ということもあるのか、今は都会の代表的な鳥になりました。
尾が長く扇状に開きます。

我が家の周りには、メジロ、ハクセキレイ、
ムクドリ、シジュウカラ、といった鳥たちがやってきます。

人間世界が騒がしく、こんな平凡な動物たちの営みにすら
ホッとさせられます。

ところで、去年金柑ジャムを作るとき、三温糖の茶色の砂糖で煮つけたら、
う○こ色になってしまったという大きな失敗をしでかしたので、(笑)
今年は、しっかり白砂糖で煮ることにします。

<関連記事>
やっぱり猫が好き

西脇市 サムホール大賞展、始まりました。私も出品しています。

兵庫県西脇市、と言えば、日本の「へそ」として有名です。
西脇市には、東経135度・北緯35度の交差点があり、
ここが「日本列島の中心」に当たることから、
「日本のへそ」のまちといっているようです。

また、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」の主人公、黒田官兵衛の
生誕地が、西脇市黒田庄町黒田、ではないか、と言われているようです。
豊臣秀吉の天下統一を支えた稀代の軍師、黒田官兵衛。
その生誕地は・・・西脇市黒田庄町黒田。

その西脇市にある岡之山美術館で現在
サムホール大賞展が開かれています。
会期は11月16日(日)から12月14日(日)まで
公式サイト 開館30周年記念 第10回全国公募西脇市サムホール大賞展

サムホール大賞展は、ビエンナーレで二年に一回開かれる公募展です。

サムホール、とは絵の大きさの規格の一つです。
紙にA4とかB3といったような規格があるように、
絵画では、主に「号」という基準でキャンバスやパネルの大きさが決まっています。
一番小さいのが「0号」で18センチ×14センチになります。

サムホールというのはそれより少し大きく細長く、
22.7センチ×15.8センチ になります。

面白い事に、少し細長いだけなのに、
表現の幅が広がる不思議な大きさなのです。

私はこの大きさが好きで、よく作品にします。
そして、今回、私も応募してみたところ
作品が入選し展示されることになりました。
と言っても自分の目で見たわけではないのですが、
事務局からお知らせ頂いているので、そのはずです。

で、入選作品を、公開しちゃいま〜す。

和紙に水干絵具や岩絵具

和紙に水干絵具や岩絵具

題名は「Linkage」(繋がり)。

人も動物も生き物すべて、虫も微生物も、
「繋がり」の中で生きています。
ひとりや一匹で、あるいはその種だけでは決して生きられません。

例えば、食べるか食べられるか、という繋がり。
鳥が、羽化前のチョウチョの幼虫を食べて栄養を取るという繋がり。
その幼虫も実は、大好きな植物の葉っぱを食べて、大きくなります。
そして木の実を鳥が食べて、その種子(seed)を運ぶ事によって
その木は離れた別の場所で芽を出す、という事も起こります。
いずれにせよ
その種(species)だけでは生きられません。

さらに、種と種もそうですが、
種の中の世代間の繋がりもあります。
子を生み育て、年老いて死ぬが、その遺伝子は孫へと継がれて行く。

この視点で見ると、生態系の中でも、種の中でも
「死」は悲しいだけのものではない、と言う気がします。
「死」がなければ、次の「生」はないのが、地球上の生き物です。

描かれている頭骨は鹿のものです。
伊豆にシダ観察に行った時、川縁で拾ったもので、
拾ったときは泥に埋まっていました。
絵の中では確かに「死」の象徴ではありますが、
同時に、植物やそれと関わる昆虫たちなどの
生への場所も提供しています。

私はそんなことを考えながら描いていました。
鳥はアカハラ。
この絵はアイボリーの頭骨を活かすために背景の色を最初に決め
それに合う羽を持ったアカハラを配してみたのです。

さて、この公募展の入賞作品は立体もあり、バラエティーに富んでいます。
実は、美術家横尾忠則氏が西脇市の出身で、
氏はこの公募展の審査員でもあります。
この美術館は、横尾氏の作品の収蔵も目的としているのです。
1200点以上の応募の中から選ばれた200点。
多彩な作品を見るのが楽しみです。

<似たような記事>
タネの話(2)/ヒマワリのタネを食べるカワラヒワの図

秀作ドキュメンタリー映画 その①「鳥の道を越えて」

「人と生き物の古くからの繋がり」
「鳥や昆虫と植物の関係」

そんな普段当たり前で、
目を凝らして見ることのない自然の営みを映像につづった、
秀作ドキュメンタリー映画を、2回に分けて紹介します。

その①は1979年生まれで本編が監督作品第一作になる
今井友樹監督の「鳥の道を越えて」。
公式サイト「鳥の道を越えて」

その②は1941年生まれのベテラン、スイス人の
マークス・イムホーム監督の「ミツバチの大地」。
公式サイト「ミツバチの大地」

おもしろいことに、
生まれも文化の土壌も全く違う2人の監督ですが、
実はどちらの映画も、監督自身の祖父との会話から
映画作りが始まっているのです。

また、両作品ともに、古くからの生き物と人間の関係を扱いながらも、
最新のラジコンヘリコプターなどを使って撮影しており、
以前なら関わる人以外見ることができなかった
鳥やミツバチの生態を映像で見る事ができます。

それだけでも、どちらも見る価値のある作品です。
しかし、二つの作品の趣は全く違います。

まず今日は、「鳥の道を越えて」です。

この映画を見たいと思ったのはもちろん私が鳥を好きだということがあります。
と同時に、そのタイトルに引かれました。
詩的でふわっとイメージがわいて来るタイトルでした。

鳥を見ていると、確かに彼らには空の透明な道が見えているのだ、
と思うことがあるのです。

鳥がその道を通ってシベリアから旅をするように
監督はおじいちゃんから聞いた
「あの山の向こうに、鳥の道があった」という言葉で
鳥を巡る旅を始めるのです。

その旅は8年にも渡ります。
村の古老や元教師などを訪ねて話を聞きます。
あそこに誰それがいる、と聞いては出かけて行きます。
そして、一冊の写真集に出会い、そこからまた様々な発見や出会いが生まれます。

それはさながら「鳥の道があった」という言葉に導かれて謎解きをして行く
推理小説のような旅です。
思わぬ文化や鳥と人との繋がりが少しずつひもとかれて行きます。

さて、
ここから先はネタばれになるので、見ると決めた方は下の鳥の絵までスキップして下さい。
また、採録シナリオは読み物として、出版されています。

監督が糸をたぐって行くと、監督の出身地である岐阜県の東濃はカスミ網による
渡り鳥の捕獲を生活の糧にした生活文化がかつてあったことが分かります。

そして、そのカスミ網を張る場所が「鳥の道」だったのです。
空が真っ暗になるくらいに渡りのツグミなどが来ると
一日に数百羽も取れたとか。

海がなく、猪などを食べる風習がなかったために、鳥は大事なタンパク源だったということ。
しかし、自然保護を理由に昭和22年にカスミ網は法律で禁止されます。
当時のGHQの方針だったようです。

しかし、このカスミ網は鳥を傷つけずに捕獲出来るために
現在は鳥の個体調査に使われていて、
英語の文献にも”mist net”と載っているそうです。

そして映画は、現在のその個体調査のためのカスミ網の様子、
調査官が目印のリングを取り付けて放鳥する手際などを
山科鳥類研究所の協力を得て、克明に見せてくれます。
私自身はこの場面が非常に面白かったです。

特に、調査官が鳥の羽を扇のように広げて見るところなど、
ああやって見られれば、克明にスケッチ出来るなあ、などと思ったり。

カスミ網の密猟は近年まで続いたそうで、
この話題は今までだと取り上げにくいものだった事は
容易に想像がつきます。

しかし、若い今井監督は、お爺ちゃんの言葉に触発された好奇心と
先入観のない取り組みで、その歴史や人々の関わりを淡々と描いて行きます。
すごいな、と思ったのは、監督のスタンスが自然で、
誰かを悪者にするような決めつけがなく、見るものに判断を任せている事です。

また、囮(おとり」と呼ばれる鳥と人間の関係など
昔の人の知恵に驚かされました。
そして、珍しいツグミの声も聞けますよ。

ただ、カスミ網が禁止されても、自然保護が叫ばれるようになっても
悲しい事に、いま鳥の数は減って行くばかりのようです。

さて、この映画で名前や姿が出てくる鳥たちのいくつかのイラストです。
他にもシロハラやアトリが出て来るのですが、
残念ながら私のスケッチブックにはまだ加わっていません。
カモはアップで写ったのが緑色の頭をして首に白い線があったので、
マガモかな、と思いましたが、定かではありません。

ヒヨドリ

ヒヨドリ


ツグミ

ツグミ


カワラヒワ

カワラヒワ


メジロ

メジロ


マガモ

マガモ

ところで余談です。
この映画は語っていませんし、これは私の推測ですが、
GHQがカスミ網を禁止したのは、多分、リョコウバトの絶滅の歴史が関わっている感じがします。
アメリカでは20世紀の初頭に、億単位で生息していたリョコウバトという鳥が
乱獲のために絶滅した、という苦い歴史があるのです。

人間の破壊のチカラの凄まじさは想像を超えていて、
このリョコウバトなど北アメリカで一番生息数が多いと言われていた鳥だったそうですが、
アッという間に絶滅します。
ナショナルジオグラフィックのサイト リョコウバト、100年ぶりの復活へ

さて、
今日、見たかったのでなんとか時間を作って映画館に行ったのですが、
モーニングショーである事と、地味なドキュメンタリーということもあるからでしょうか、
観客が少なかったのがとても残念でした。

上映後、監督自身がご挨拶されたので、少しお話しさせて頂きました。
それもあり、
是非週末には若い方達にも行って頂きたいと思い、
「ミツバチの大地」の方を先に見ていたのに
こちらを先に記事にしました。

週末にはトークショーもあるようです。
お薦めの一作です。
お時間があれば是非どうぞ。

ドキュメンタリー映画関連の記事
ルーブル美術館の秘密
陸軍登戸研究所

ライオンは寝ている。一方トラは……

上野動物園、第二弾は、当日のお目当てのライオンです。
多摩動物園ではライオンバスに乗らないと見えないので
上野動物園に来たのですが、こちらも展示方法が以前とは違って
ライオンは高低差のあるかなり広い熱帯庭園風の場所にいました。

一部ガラス越しに間近に見る事も出来るけど、
ライオンがそこに来てくれないと、迫力たっぷりのズームは楽しめません。

だいたいの時間、入園者の通る通路から一番離れた低い場所にいるので、
まず見つけるが大変でした。
デッサンするにも見える場所に来てくれるのを待たなければなりません。

ライオン動かないなあ、と思っていると突然位置を変えるので、
こちらにお尻を向けて顔が見えないときは、
隣のトラ舍に移動して、デッサン。

トラの方は、ライオンと全く違って、
決まった場所を行ったり来たり、0.5秒として止まることがありません。

そしてこちらはサービス精神旺盛で
時々入園者の目の前のガラスに顔を付けるようにして
通り過ぎます。

しかし、近いというだけで、動きを止めないのは同じ。
こういう動物をデッサンするのは難儀です。

動き回るトラを描くのに疲れると、ライオンが描ける位置に移動していないか
またライオン舍に確認に行きます。

それを繰り返して3度目くらいの時に、ようやく、15メートルくらい先の
丸太の上で休憩中のライオンを描くことができました。

20141024_1

20141024_2

この絵を描いている間も、そして今もこのスケッチを見ると
私の頭の中をリフレインするのがトーケンズの「ライオンは寝ている」。
The Tokens – The Lion Sleeps Tonight

片やトラは寸時も止まらないのでデッサンに工夫が必要です。

というのはトラは、ほぼ同じところを行ったり来たりするので、
「描く」と決めたアングルにトラが来た時に、一瞬を捉えて
描き加えて行きます。

下のデッサンは、見ている時間は15分くらいだったと思いますが、
このアングルになった一瞬だけ描き込んでいるので、
時間的には5分も描いて無いでしょう。

20141024_3

トラ舍には常連の「トラおじさん」がいて、
入園者がトラが思いのほか細身なので
「わあ、このトラ、スマート!」と声をあげると
「だからスマトラトラ、なんちゃってね」と合いの手を入れていました。(笑)

ところで、
トラを描きながら人々の感想を聞いていると
毛皮の模様がきれい、というのが多かったです。
トラは絶滅危惧種です。
Amazing Species: Tiger(IUCN(国際自然保護連合)の英語のサイト)(PDFファイル)

意外や意外、百獣の王と言われるライオンより、
トラのほうがネコ科の中で最も大きい動物なのですが、
今は3500頭くらいしか残ってないみたいです。

キレイな動物は、キレイがゆえに命を落とすはめになりかねないのです。
トラを脅かす問題(WWFのサイト)

私はデッサンに入り込むと、ほぼのまず食わずで3時間くらい野外に立ち続けます。
この日も、寝てばかりのライオンと動きすぎるトラを描いて、
帰る頃にはくたくた。
同じネコ科なのに、なぜ、ライオンとトラはこんなにも
行動が違うのかしら、
と思いつつ動物園をあとにしました。

それにしてもネコ科の動物はほんとしなやかでキレイですね。
創作意欲を刺激してくれます。